アライグマは、体重5〜12kgの小型〜中型の哺乳類です。夜行性で、
南北米の温帯から熱帯に住み、もともと日本には生息していませんでした。
しかし、1977年のアニメ番組放映をきっかけに、ペットなどとして日本に
大量に輸入されました。その結果、逃亡したり、家庭で飼いきれずに
野外に放されたものの一部が日本各地に定着、繁殖しました。
近年、埼玉県においても、比企地区を中心にその数が激増し、
生息域も拡大しています。

アライグマは手先が大変器用で、木登り、泳ぎが得意です。
また、日本国内には天敵がいません。雑食性で、スイカなどの果物や
農作物、ネズミなどの小型の哺乳類やカエル、ヘビ、魚類、さらに
人間の出す生ゴミも餌にしています。これらの「野生アライグマ」は、
在来生態系に大きな影響を与えるだけでなく、農作物被害や家屋侵入など、
様々な社会問題を引き起こしています。

アライグマ回虫症とは
アライグマ回虫(学名 Baylisascaris procyonis)は、北米のアライグマには
普通に見られる寄生虫で、成虫は小腸に寄生しています。
アライグマ回虫の生活史(ライフサイクル)を見ると、雌の成虫によって
産卵された大量の虫卵は、糞便を通じて外界に放出され、約2〜3週間で
感染力を持つ幼虫包蔵卵まで発育します。
この「感染幼虫包蔵卵」をアライグマではなく、ヒトやネズミ、ウサギ、
鳥類などが経口摂取すると、幼虫が急速に成長しながら体内を移動します。

特に、眼及び中枢神経系に移動して幼虫移行症を引き起こし、
重篤な脳神経障がいの原因になることが知られています。
幸い、国内では現在までの所、ヒトへの感染例は一例もありません。しかし、
米国疾病予防管理センター(CDC)によれば、米国においては1981年の
初めての患者発生以来、アライグマ回虫を原因とする重症脳障がい患者が
少なくとも25例確認され、そのうち5名が死亡しています。そのため、
この寄生虫の国内野生アライグマへの侵入が心配されています。