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ハビシャムの書斎にて
伯爵「ロンドン市内のハリス宅に繋いでくれ」
交換手にそう伝えた。

伯爵「もしもし…おう、サー・ハリスではないか?朝にお前の家に伺って
ブリジットを連れてきた」
ハリス準男爵「御前、お久しぶりですね。今日はブリジットがお世話に
なって恐縮です」
伯爵「てっきりわしは甲斐性なしの年増の…あ、いや、レディ・ハリスが
電話に出るとばかり思っていたわい」
ハリス準男爵「それは妻のことですか?…いやあ、そう言われても仕方がないか。
それでご用件はなんですか?」
伯爵「先ほどブリジットがこちらで夕食を食べたら帰ると電話したようじゃが、
どうだろうか?今晩、一晩だけハビシャムの家に泊めるというわけにはいかぬか?」
ハリス準男爵「そういうことでしたか?…まあ、いいでしょう。ですがブリジットは
明日、学校があるのです」
伯爵「そうか、明日は月曜日だったか。じゃあ明日、朝ごはんを食べたらそちらへ
寄ってその足で学校へ行くわけにはいかぬか?」
ハリス準男爵「いいでしょう。但し、条件があります。今日は若君と一緒のようですが
あまり夜更かしをさせないようにお願いします。学校に遅れたり、日中眠気がさした
のでは学業に支障をきたしますのでね」
伯爵「わかった、約束しよう」
ハリス準男爵「では娘をお願いします、御前」
伯爵「ああ、わかった。それではレディ・ハリスによろしく言っておいてくれ」
そう言って電話を切った。