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伯爵「アニー、儂のことを恨んでいるか?」
アニー「何故ですか?そんなわけありませんわ」
伯爵「儂はお前がアメリカ人だからといって散々ひどい態度を取ってきた。そしてこのようなことに巻き込んでしまった」
アニー「ちっとも気にしていませんわ。それに私たちに休暇を与えてくださったり、お父様が心の優しい方だということは存じ上げております」
伯爵「アニーは可笑しなことをいうなぁ…。しかしな、アニーのお陰でセドリックと会えたし、儂の人生は寂しくなくなった。
それに、お前とウィリアムが再婚してから、儂も大切なことに気付くことができた」
アニー「大切なこと…?」

伯爵「色々あるじゃろうが、そなたは一人でコートロッジにいるときにハビシャムがよく心配して来てくれたと申しておったな」
アニー「ええ」
伯爵「つまり、ジェイムズが死んだ後、セドリックと離ればなれになった後はウィリアム・ハビシャムが心の支えになってくれておったわけじゃな」
アニー「お父様?」
伯爵「儂はな50年近くの間、側でずっと支えてくれた人がおった。儂が別の女性と結婚した後も。でも儂は去年までその事に気がつかなかった。なんてバカだったんじゃろうって」
アニー「そんなことありませんわ。中々気付くのは難しいことですわ。私もウィリアムが思いを伝えてくださったから気が付いただけかもしれませんし…」
伯爵「ハビシャムは気の遣えるやつじゃ。しかし思いを伝えるまでとは、よほどそなたのことが好きだったんじゃな」
アニー「そんな…」
伯爵「儂は先妻のことを愛していた。しかし幸せにしてやれたかどうかは分からぬ。だから今回ばかりは本当に幸せにしてやりたいんじゃ。人目を気にした結果一度は冷めて何十年もたったが、また気持ちがよみがえってきたんじゃよ」
アニーが伯爵の手を握った
アニー「大丈夫ですわ。そこまで御理解なさってるなら」
伯爵「今の儂にはレスリーしかおらん、レスリーが必要なんじゃ…」

メロン夫人はお茶の用意がとっくに出来ていたが、リビングに入れずにいた。
下を向いてずっと泣いていた。