今更ながら豊田有恒『「宇宙戦艦ヤマト」の真実』を読んだ。
西崎Pへの批判のトーンが予想より甘かったのは意外だったが、プロの作家
(しかも相当なキャリアを積んだ)なのに、あまりに文章が下手なことに先ず驚いた。
事実関係の誤認(当事者なのに)の他、ヤマト以外の話題での雑学レベルの間違いの多さ、
古い都市伝説をそのまま信じていること等にも頭が痛くなった。

だが、この本の一番の問題は、西崎から企画参加を持ちかけられ最初に会った時点で
漫画は松本零士に依頼し既に承諾を得ている、と伝えられたとする点、
「戦艦大和を使おう」というアイディアを提案したのが松本だとする点。
「ぼくの記憶に間違いがなければ」と書いているが、これは明らかに豊田の記憶違いである。
松本が企画に参加するのは最初の企画書が完成した後であり、その時点で既に
「宇宙戦艦ヤマト」というタイトルも設定も決定している。
それは数々の資料や関係者の証言からも明らかな客観的事実であり、何より
松本零士自身の証言(例の著作権裁判中の証言を含む)からも裏付けられる。
リアルタイムでのめり込んだファンなら皆(?)知っていることだ。
そもそも船が飛ぶというアイディアは戦前の「新戦艦高千穂」をはじめ
多くの前例があり、それほど(宇宙まで行く点を除けば)斬新な案ではない。

松本のことを「おおよその原作者」と書き、“おおよそ”の部分の全てに
傍点が付されている辺りに本音がチラ見えするのだった。