MEGU:96年2月号「宮武一貴の世界」より

宮武さんがメカデザイナーとして、最初に関わった作品はなんですか?

創英社、つまり今のサンライズさんの『ゼロテスター('73)』です。僕は企画段階から
参加しました。上井草のスタジオに詰めて、デザインをいっぱい描きましたよ。
最初は僕もスタジオ側もアニメ設定書の描き方がわからなくて大変でした。この作品は、
『サンダーバード』のアニメ版をねらって企画されたんですが、そのせいか、
メカデザインはジョン・デドワという名前でクレジットされています。たぶん、
日本人の名前では売れないと判断したんでしょうね。0テスター1号のデザインは、
売りになるものが欲しくて、三人の主人公から、ひとつの戦闘機が三機に分離するという
アイデアを考えました。主翼の収納、垂直尾翼がふたつに割れるギミックの構造、先尾翼を
つけるべきかとか、いろいろ悩みまして、デザインの完成には三ヵ月もかかっています。
そういえば、アニメメカのリアルな分離合体システムというのは、これが最初みたいですね。
企画の段階で、すでにポピーの方でテスター四機以外にも、基地まで商品化することが
決まっていたので、ぼくも基地のデザインを出したんです。いま思えば、ヤマトそっくりの
宇宙基地でした。結局採用されませんでしたが、ブリッジがそびえ立っていて、人工重力区画や
ドッキングベイも備えてまして、先端には2号機がドッキングして艦首を形成している……
という、とにかく壮大なものでした。僕はアニメに関わった初作品でタイアップというものを
体験したせいか、僕自身は、玩具メーカーがアニメ製作にスポンサーとして関わることに、
ほとんど抵抗はないんですよ。こちらもアニメと同じぐらいプラモデルなどが好きですから、
メーカーがいっしょにやってくれるのは、逆にうれしいくらいです。試作モデルの監修チェック
やら、アイデア会議など、玩具に関することに労力を注いでも苦ではないです。ただ、
スケジュールのことで、アニメのプロデューサーさんがいつも悲鳴をあげてますけどね(笑)