http://www.gizmodo.jp/2012/10/cpu.html

アップルがその独自チップ強化に向けてさらなる一歩を踏み出したようです。ウォールストリート・ジャーナルによると、アップルはサムスン
から熟練エンジニアのジム・マーガード(Jim Mergard)氏を引き抜いたのです。

これには、いくつか大きな意味があります。まず、アップルの独自チップ設計への深いコミットメントを意味するものになります。iPhone 5の
A6チップは独自カスタムコアを使った最初のチップでした。A4、A5、A5Xと、アップルはカスタマイズしたチップを使ってはいましたが、それら
はみんなCortex-A8やA9といったARMアーキテクチャ上に構築されたものでした。つまりこれまでは出来合いのものの一部をいじっただけ
だったんですが、A6ではARMのリファレンスデザインを使いつつ、一から独自に作ったんです。それはチップデザインにおいては大きな違い
で、このことによってA6のパフォーマンスとバッテリーライフが一度に改善したんです。

マーガード氏は、AMDでSoCチップやローエンドPC向けAMDチップの設計を長く手がけた後でサムスンに入った人物です。ウォールストリート・
ジャーナルでは、AMDの元役員のパトリック・ムーアヘッド(Patrick Moorhead)氏が「アップルはMac用SoCチップを作る方向に向かっているの
ではないか」とコメントしています。中でもMacBook Air用チップを独自に作るのが一番ありえそうです。または、A6用に作ったカスタムコアをさ
らに改善して、他社からキャッチアップされないようにするためかもしれません。

サムスンもそんな競合のひとつになります。なるべく優秀な人材を求めようとした努力の結果なのでしょうが、サムスンから引き抜くことには
アップルにとって特別な意味があったことでしょう。図らずもそのタイミングは、サムスンがチップデザインに注力すると表明した矢先のことでした。

ひとりのエンジニアの居場所が変わったからといって、すぐに何かが変わるわけではなさそうです。でもこれから、次世代またはその次の世代に、
アップルがそのチップを他のものから差別化するにつれて、この引き抜きの意味の大きさが見えてくるのでしょうね。