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 アップルの国内パソコン市場でのシェアが10%の壁を突破した。1999年12月以来、実に12年ぶりとなる。

 全国の有力家電量販店の販売実績を集計しているGfK Japanのデータによると、「MacBook Air」とMac用の最新OS「Lion
(Mac OS X 10.7)」が発売になった直後の7月25日〜7月31日の集計で、アップルの販売台数シェアはノートパソコンが10.0
%、デスクトップが13.4%となり、あわせて10.9%のシェアを獲得した。

 デスクトップでは既に10%以上のシェアを持っていたが、今回はノートパソコンでも2桁のシェアを獲得。市場構成比の大
きなノートパソコンでの躍進が市場全体でのシェアを押し上げた。

 かつてアップルは、1999年1月に5色展開のiMacを発売。その大ヒットの勢いを持って投入したiMac新製品と、初代となる
iBookを1999年10月に投入。GfK Japanの調査では、1999年12月20日〜26日の集計で2桁シェアを獲得して以来、およそ12
年ぶりの10%突破となった。

 ちょうど5年前の2006年7月24日〜30日の集計ではノートパソコンで3.5%、デスクトップパソコンで3.3%、合計で3.4%であっ
たことと比較しても約3倍にシェアが拡大。これに別集計とされているタブレット端末の「iPad」を加えると、さらにアップルの存
在感は大きくなる。

 Macの躍進ぶりは先頃同社が発表した第2四半期(4〜6月)の決算でも明らかだ。この決算内容はMacBook Airの発売前
だが、全世界での販売台数は前年同期比14%増の394万台。日本では16%増の15万台となっており、Windows陣営に比べ
て高い成長率となっている。勢いがあるなかでの新型MacBook Airの投入で、さらに弾みをつけたというわけだ。

 では、国内市場において、アップルが12年ぶりとなる10%シェアを獲得した理由はどこにあるのだろうか。

 好調の理由はいくつか考えられる。1つめは、iPhoneやiPadの利用者増加を背景に、Macに対する購入のハードルが低く
なっていることだ。

 iPhoneの販売台数は、アップルの発表によると第2四半期だけで、全世界で2034万台を出荷。前年同期の840万台から
242%増という驚くべき成長を遂げている。iPadも同四半期に925万台を出荷。前年同期比283%増というさらに大きな伸びを
記録している。日本においてもこの状況は変わらない。iPhoneやiPadの使い勝手に満足した利用者が、同じメーカーのパソ
コンを購入するのは自然な流れだ。

 とくに、今回発売されたMacBook AirとLionの組み合わせは、まさにiPhoneやiPadを彷彿とさせる使い勝手を実現している。

 スリムなきょう体やコンパクトさに加えて、SSDを活用した起動時間の短縮化、30日間スタンバイ状態を保持できるバッテ
リー寿命などは、まさにiPhoneやiPadの特徴をMacに移植したものともいえる。

 昨年10月にMacBook Airが発表された際には、スティーブ・ジョブズCEOにより、Lionのプレビューも行われた。Lionの正
式発売に合わせて新型MacBook Airを投入したのは、この組み合わせがiPhoneやiPadと同じ使い方を提案するものになる
との自信があったからともいえよう。

 MacBook Airのマーケティングメッセージは、「毎日のための、究極のノートブック」。この「毎日のための」という言葉の中
には、iPhoneやiPadで実現している、毎日持ち歩いて使うという意味が込められているのは明らかだ。つまり、遠回しではあ
るが、今回のMacBook AirはiPhoneやiPadの使い勝手を実現するノートブックというメッセージと捉えることもできる。

 MacBook Airでは、Windowsユーザーの買い換え、買い足しといった動きが見られている。Windows PCとのデータ互換性
の向上や、Webサービスの利用拡大によって、Windowsでなくてはならないユーザーが減少しているとの声もある。そして、
Lionでは、標準搭載している「移行アシスタント」のなかで、Windowsの環境をMacへと移行できる仕組みを新たに用意。これ
もWindowsユーザーの「初めてのMac購入」を後押ししているようだ。

 そして、低価格であることも見逃せない。MacBook Airの実勢価格は8万4800円から。同等性能のWindows PCと比較して
も割安だ。これもMacBook Airの購入促進に大きな威力を発揮している。

 12年前の10%突破は、日本中が沸くアップルブームのなかでの達成だった。今回の10%のシェア獲得は、静かななかで
の大台達成だ。こういう状況での10%突破こそ、12年前とは異なる「実力」を感じざるを得ない。