>>620
 つまり、さっき言ったみたいに、スーパーマーケットの中で55年間とか63年間生きていたとしても、
他のものがですね、徐々に徐々に失われていくわけですね。

 そして、もう1つの理由です。
 これ「どんなに情報を集めて、どんなに本があっても、自分自身に外科手術が出来るのかどうか?」という話なんですけど。


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 本棚から医学の教科書を引っ張りだして、専門用語や薬剤名だらけのページをめくったとしたら、何が理解できるだろうか?
  大学の医学の教科書は、莫大な予備知識を前提としており、
 定評のある専門家による講義や実習と並行して使用することを意図して書かれている。

 生存者の最初の世代に医師がいたとしても、使い方を訓練されてきた現代の大量の医薬品や試験結果なしには、
 なし遂げられることは大幅に限定される。薬は薬局の棚や、廃墟となった病院の冷蔵貯蔵室で劣化してしまうだろう。

 こうした学術書の大半は、それ自体がおそらくは無人の都市で火事が無制限に広がることで失われるだろう。
 さらに悪いことに、毎年、生みだされる新しい知識の宝庫の大半は、僕ら科学者がつくりだし、
 研究のなかで利用されるものを含め、耐久性のある媒体にはまったく記録されていない。

 人間が理解していることの最先端は、主として一時的なデータとして存在する。
 専門誌のウェブサイトのサーバーに保管された学術「論文」として。

 そして一般の読者向けの本などはほとんど役に立たないだろう。平均的な書店に並んでいるような類の本しかもはや手に入らない、
 生存者の一団を想像できるだろうか? 自己啓発本のページに書かれているような知恵から再建を試みたところで、
 文明はどこまでそれを実現できるのか? 経営の成功術とか、?せた自分をイメージするとか、
 あるいは異性のボディランゲージを読みとるためのハウツー本などで?

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 その通りなんですね。
 「本は役に立つ」と思いがちなんですけども、実は、今、本屋に並んでいる本の大半、
9割までが「今の文明が平和に続いている限り、ちょっと役に立ったり、ちょっと楽しくなったりするような本」なので、
ゼロから生き残るための本というのは、サバイバル術みたいな本しかない。

 そのサバイバル術も、所詮は「今の社会をちょっと離れて野山で1人で生き残る」というような前提で書かれているので、
やっぱり、20年、30年、40年という時間の流れを前提にしてないんですね。
 だから、生き残っている者達が集まって、お互いに知っていることを組み合わせて文明を守るしかないんですよ。