>>775
 もちろん、小金井丸が戻って来れたのは、マンマーレのおかげです。ということは、
観客にすら聞かせられないリサとマンマーレの会話は何だったのかというと、
おそらく「あなたの夫は生きて返してあげるから、その代わり、あなたの息子を差し出しなさい」
というやり取りをやっていたということなんですよ。

 なぜかと言うと、このリサという女の人は、息子である宗介の晩御飯よりも、夫との喧嘩の方を優先させる人なんですよ。

 子供を乗せているのに、無茶で乱暴な運転をするのが好きな人であって、
自分の子供には「ママ」ではなく、「リサ」という名前で呼ばせるような人なんです。

 このリサというお母さんは、宮崎アニメの中では、かなり不自然なほどに母親的な部分が少ない。
母性は少なめ、女は多めみたいな「母親ではなく、どちらかというと女だ」というふうに描かれるキャラクターなんですね。

 そんなリサにとって、誰にも知られないところで持ちかけられた「あなたの夫を返してあげるから、
息子を私にちょうだい。でも、安心して。あなたの息子をあなたから取り上げるわけではないの。
そうじゃなくて、私の娘があなたの家でずっと暮らすというのでいいから」という、
マンマーレからの提案は、案外、良い提案だったんじゃないかと思います。

 流石にこんな話は観客には聞かせられない。

 でも、「リサとマンマーレが何か内緒話をしている」という雰囲気だけは伝えたい。

 そして「女が内緒話をしている時というのは、必ず男にとっての不幸が起きる」という、この世の真実だけは伝えたい。

 だから、こんな不自然なシーンになっているわけですね(笑)。

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