>>225
 はい、どうもお疲れ様でした。

 コメントを見てたら、「新海誠はそこまで考えていたのか?」と言う人がいたんですけど。考えているに決まってるんですよ。
 ええとね、アニメの監督って、たぶん、普通の人が思っているより100倍考えています。これ、本当に真面目な話。
 100倍考えた上で、「これをどこまで見せようか?」というのを調整しながら出してるんです。

 それまでの新海誠は、そういうのを「わかってほしい! わかってほしい!」という出し方をしてたんですけど、
「やっぱり、それでは売れない」というのがわかるわけですよね。

 そこで、「あくまでベタなドラマを提供して、そのバックグラウンドの方に自分の言いたいことを引っ込める」
ということを徹底的にやった。
そのおかげで、プロデューサーの思惑通り、ちゃんと当てることができたんですけども。

 まあ、解説の中で、いくつかミスがありました。地球はですね、銀河の中心から「3.5万光年」です。3.5光年のはずがない(笑)。
 あと、銀河の自転って、僕が昔、本で読んだ時は、「10億年」と書いてあったんですけど、
最近は「2億年から2億5千万年」となっているそうです。
 ちょっと、そこだけ修正しておきます。

 なぜ、町長である三葉の父が、三葉の言うことを信じて町の人達を避難させたのかというのは、
映画内ではほとんど説明されてないんですね。
 これも、やっぱりわざとなんですよ。新海誠は、これを説明しようとしたら、そういう脚本も描けるわけですね。

でも、それを描かないわけなんです。抑えるわけですね。
 「そうか! 三葉の父も、三葉と同じように、昔、入れ替わった記憶があるんだな! 構造的に重なっているんだな!」というのは、
気が付ける人にだけ気付いてもらおうというふうになってるんですね。

 これに気付かないような人というのは、とりあえず主題歌をガンガン掛けて、盛り上げたら、勝手に感動してくれるわけですよ。
 そうやって、「ベタで盛り上げつつ、映画の構造的な面白さというのも、わかる人にだけわかるように、あえて後ろに引っ込める」
というところが、この『君の名は。』の、世界映画としてメジャーを狙ったところだと思います。

 「ティアマト彗星が、地球に落ちた欠片に会いたがって、1200年に一度地球に欠片を落としてくる」という、
七夕のような、大変ロマンチックなお話を、夏に持ってくる。もう「この映画で当ててやる!」
という勢いを感じる戦略、僕は好きですね。

 「テッシーという友達の自転車を壊したことは、映画の中ではクライマックス以降、なかったことになっている」ということで、
世界線がそこで切り替わっているんですけど。これも、気が付く人だけが気が付けばいい。