>>222
 お父さんが、なぜ、それまで再婚しなかったのか? なんで、お母さんのことを
ずっと大事に思っていたのかというと、こんな体験があったから。

 だからこそ、娘の世迷言のように聞こえた話を、お父さんも本気にしてくれて、
「ああ、じゃあ、本当に隕石がこの場所に落ちてくるんだ」と信じてくれた。
 でなければ、お父さんの心変わりする理由がないんですね。

 映画の中では、三葉がお父さんのところに行って、真剣に「お父さん、話を聞いて!」と言うところまでしか描いてないんですけども。
 その後は、もう全て終わってて、「町長が急にすごい指導力を発揮して、村民を避難させた」という新聞記事が出ているだけなんですよ。
 なぜ、このお父さんが動いたのか、全く説明がない。
 でも、それは、「思春期に誰かと入れ替わるという関係が、三葉の一族それぞれに成立してたから」なんですね。

 つまり、この『君の名は。』というお話では、時間的、空間的な部分で、多重構造的に「結ぶ」ということが行われているんです。

 では、ティアマト彗星の軌道図というのを考えてみましょう。

(ホワイトボードに図説する)【画像】彗星の軌道  https://epbot.site/img/semi/nico_190630_03607.jpg

 まあ、いくつか間違いも指摘されていますけど。太陽があって、その周りを地球が回ってる、と。
 ティアマト彗星は1200年に一度、太陽系外から地球の近くを通って、太陽の方に行く彗星です。
 なので、彗星の位置がここにある時は、尾がこのように伸びていきます。太陽風で彗星の尾というのは伸びていくからですね。

 今回は、この彗星が2つに割れ、その破片が地球に落ちたことで、大災害が起こります。
 ところが、彗星が落ちる前のこの村の写真というのを見てみると、巨大なクレーターのようなものがあって、
その真ん中に神社があるんですね。この隣に村があるような構造になっている。

 もちろん、このクレーターというのは、1200年前に彗星が落ちた時に出来たクレーターです。
 つまり、「この村に彗星が落ちる」という事件は、さっき言った「三葉、お母さん、お婆さんそれぞれが、
思春期に誰かと身体が入れ替わる」というのと同じく、過去に何度もあったのかもしれない。

1200年前、2400年前という周期で、あったのかもしれない。
 そして、なぜ、こんなことが繰り返されるかと言うと、「かつて地球に落ちて来た隕石の欠片が、
ティアマト彗星にもう一度会いたいと思ったから」なんですね。

 お話全体は「七夕」なんですよ。
 2つに分かれたもの同士が「もう一度会いたい」と願う。これは、人間であっても隕石であっても気持ちは同じなんです。
その願いが奇跡を起こす。