>>210
 これによって、これから8月に訪れるドラマ全体のクライマックスも、自動的に
『太陽の王子ホルスの大冒険』になるということに、ほとんど自動的に決定したわけですね。

 ということは、お話全体の盛り上がりも、「経営者と労働者の対立の中で、本当に作りたいアニメ、
作るべきアニメというのは何なのか?」という部分になる。

 でも、『太陽の王子ホルスの大冒険』は興業的に大失敗するんですよね。
興業的に大失敗した結果、二度と演出の仕事が回ってこないということに絶望して、高畑勲は東映動画を去る事になるんですけども。
 この歴史的事実を、ハッピーエンドで終わる朝ドラの中に、どのように入れるのか?

 ハッピーエンドのドラマの中に、こういうのを入れるのは難しいので、そこはもう、
グニッと曲げて「『太陽の王子ホルスの大冒険』みたいなアニメは大成功しました」っていうふうになるのか?

 または、『あまちゃん』の中に出て来る3.11大震災のように、
「こんなこともあったんだけど、でも、立ち上がりつつある。なつはやっぱり元気です」というふうにするのか?
 そこら辺、もう、どんなハッピーエンドにするのか、ちょっとワクワクが止まらないような状態です。

 ドラマの中での坂場さんというのは、高畑勲がまだまだ下っ端だった時代なんですけど。
ここで語られる彼の演出法というのはソクラテスの対話法に近いですね。

 「これでいいんでしょうか?」というふうに、相手にどんどん聞いて行くことで、相手のハードルを上げていく。
 「それでいいんですか?」、「本当にそれでいいんですか?」、「顔だけの演技だけでいいんですか?」、
「それしか考えてないんですか?」というふうに。

 これ、聞いている自分の中に答えがあるかどうかは問題じゃないんです。
 だから、坂場さんは、「じゃあ、どうすればいいんですか?」という聞き返しに対して、何も答えません。
なぜかというと、これが対話法による演出だからですね。

 それよりも、アニメーターが自分と同じ問題意識を持って描いてくれれば、その悩みから生まれた表現というのは、
必ずや絵を描けない自分の想像の上を行く、尊敬できるものになる、と。
 そういう作り方なんじゃないかと思います。

 来週は、舞台が十勝に戻るので、アニメの話は1回止まるんじゃないかと思います。
 7月8日からの週に、ついに宮崎駿が登場するみたいですね。一気にアニメが加速するので、
今週は一休みしながら、続きを見ていこうと思います。
 『なつぞら』の話はここまでです。