>>959
 例えば、その映画の中に自転車屋さんが出てくるんですけども。
街の小さな自転車屋さんです。そこで買えば自転車は50ドルくらいなんですね。
ところが、近くに出来たウォルマートでは、バーゲンとして、週末に限って18ドルで自転車を売るんですよ。
そしたら、もう街の自転車屋さんで自転車を買う人なんか、全然いなくなっちゃうんですね。

 そして、そうやってウォルマートの周りにあった街の自転車屋さんがすっかり潰れた後、
ウォルマートは週末のバーゲンをパッとやめて、自転車を1台70ドルで売り出すんです。

 これは、ウォルマートにしてみれば卑怯な商売でもなんでもないんですよ。
ただ単に「普段70ドルで売ってる自転車を、週末に限って18ドルで売ってるだけ」で、
普通の商売なんですけど。それによって、地元の自転車屋みたいな店はどんどん潰れて行ったんです。

 実は、1960年代の半ばくらいまで、アメリカでは、こういう
「大量仕入れによる大量値引き販売」というのは法律で禁止されていたんですね。

 しかし、70年代に入る前辺りから、この規制が段々と崩れてきたんです。
 それを助長したのは、主に消費者たちなんですね。「なんで安くていいものを手に入れちゃいけないんだ!?」
という消費者たちが政治家たちに働きかけた結果、あとはウォルマートやKマートなどの大規模小売店が
政治家に献金などをして政治運動をした結果、この値引き禁止法案みたいなものが事実上の廃案になってしまって、
いくらでも安く売れるようになった。

 「その潰れた自転車屋さんを経営していた男性の息子は、今やウォルマートで全米最低以下の賃金で働かされています。
彼は自分の貰っている給料では自転車も買えません」という話が、その映画の中で紹介されていたんですね。

 これによってですね、ウォルマートの創業者サム・モルトンという男は、世界一の大金持ちになったんですよ。
 しかし、今やAmazonの大活躍によって、世界中のウォルマートやそのチェーン店が、バンバン潰れてるんですね。
 Amazonのジェフ・べゾスは、今、世界一の金持ちになりつつある。もう既にモルトンを抜いてしまってるんですけども(笑)。

 まあ、この辺を見ていると、もう本当に「人の世は常ならず」という感じがして、
ちょっと「ざまあみろ!」と思っちゃうところなんですけど。