>>958
 1950年代に始まったこのショッピングモールには、たちまち中にレストランが出来て、映画館が出来て、ボーリング場まで出来ました。
いわゆる、日本の地方にあるイオンモールのような総合娯楽施設になりました。これが1950年代のアメリカです。

 すると、人々というのは「買い物の用もないのに、とりあえずモールへ行こう」ということになります。
 この段階でも、まだ街の小さい商店というのは生き残っているんですけども、しかし、コミュニティは徐々に徐々に破壊されていきます。

 小さい店だったら、誰がどこで何を買っているのかわかるから、
街の人たちというのは、直接の知り合いでなくてもお互いに何となくわかる人になるんです。

 しかし、ショッピングモールになってしまった瞬間に「何を買っているのかわからない」ということで、
街の中にどんな人がいるのかわからなくなるんですね。

 この頃から都市伝説とかモダンホラーとか生まれるようになりました。
「街の中に正体が知れない人がいる」というのは、殺人鬼の噂を呼び、あとは『ゾンビ』という映画に代表されるように
「街の中に異物がいるかもしれない」と言われるようになりました。
“見知らぬ隣人”という存在が生まれたのも、ショッピングモールが出来た頃からです。

 これが第3段階ですね。

 そして、第4段階が“大規模小売店”なんです。

・・・

 大規模小売店というのは、1962年……前回、話したガガーリンが地球の軌道を周ったことで、
ケネディがパニックになり、その3日後にキューバ危機が起きて、ケネディが更にパニックになって
「10年以内にアメリカ人を月に送ります!」と言った、あの年です。

 この年に、アメリカ国内に“ウォルマート”とか“Kマート”という、大規模小売店が生まれるようになったんですね。
 大規模小売店というのは「とにかく安く、とにかく大量に仕入れて売る」というお店です。
これによって、街の商店はついに徐々に滅びるようになりました。

 この辺りの大きい流れというのは、1990年代くらいに公開されたドキュメンタリー映画
『ウォルマート 〜世界最大のスーパー その闇〜』の中に描かれていました。日本語版は出てないんですけども。