>>428
 これを説明するために、僕はいつも「タイタニック号」の例えを出すんですけど。

 みんなは今、大型船タイタニック号に乗っている。まあ「現代の産業」という名のタイタニック号に乗っていると。
 これがもう、状況が危なくなって、沈みつつある時、みんな、その中で一番大型のボートを探そうとするんですね。
脱出ボートの中で、一番大きくて安全そうなものに乗ろうとする。これが普通の人の考え方なんだけども「それはどうだろう?」と。

 こういったタイタニック号、今の普通の会社とか、普通の産業がどんどん沈んでいくのは、
「タイタニック号が氷山に当たったから」ではなくて、「海が硫酸に変わっちゃったから」なんです。

 この広い海が、塩水じゃなくて「濃硫酸」に変わっちゃったから、船の底が溶けてどんどん沈んで行く。
だから、他の船に乗っても安全ということはない。大型の脱出ボートに乗ろうと、
その船が同じ様に鉄で出来ている限りは、やっぱり沈んじゃうからですね。

 「そうじゃないだろう?」と。「そうじゃなくて、形は小さくても、ポリエチレンのバケツとかを組み合わせて
ゴムボートを作っているやつを手伝った方がいいよ」と。

 つまり大きな会社というのは、丈夫な船を作ろうとしてどうしても鉄で作っちゃうから、硫酸の海で溶けやすい。
そうじゃなくて硫酸では溶けないポリエチレンのイカダみたいなものの方が、まだ生存確率が高いんです。

 さらに、その濃硫酸の海の向こうにあるのは、「180度のサラダ油」かもしれない。

 変な喩えですけど、グツグツの天ぷら油みたいな海がその先に見えていたとしたら、
もうそこはポリバケツのイカダでもダメですよね? ポリバケツは溶けちゃいますから。

 その場合は、案外、ダンボールとか紙を重ねて貼っていった方が、180度の天ぷら油の海では生き残れる確率が上がる。

 こういうふうに「なぜ、この船が沈むのか? それはどういう状況なのか?
次はどういうふうになっていくのか?」が見えてるか見えてないかで、生存確率は全然違うんです。

 そして、船が沈みかけているとうことの原因を知り、その先の海の状態を見通す能力。
この見通す能力があるかないか、この格差のことを、この本では「未来格差」と呼んでいます。