>>44
 フォン・ブラウンというのは、ロケット界のビル・ゲイツでもありました。
 ビル・ゲイツというのは、AppleとかIBMとかと手を組むことすら恐れない男だったんですよ。

 本来、マイコンとか、マイクロコンピューターをやってた人というのは、
IBMに対して、恐れたり反発したりしていたんですけども、そういうところと手を組むのも恐れない。

ライバルのAppleにも、平気でOSを提供する。目的のためには手段を選ばない男。それがビル・ゲイツなんですけど。
 フォン・ブラウンも、それと同じなんですよね。

 ドイツ宇宙旅行協会のメンバーが大反対する中、1人でナチス党に入って、強制収容所から集めた“痩せこけた奴隷たち”、
ポーランド人とか、ソ連の捕虜の兵隊をかき集めて、一年中、日の当たらない洞窟の中で働かせました。

 そんなふうに、もう何万人も殺して、V-2号ロケットを作ったんです。
 まさに、目的のためには手段を選ばない白い悪魔、フォン・ブラウンです。

 彼は、第二次大戦でドイツが降伏する前から、すでにアメリカに亡命する計画を立てて、
「ドイツはもう負けるから、みんなでアメリカに亡命しようよ!」と、同僚を説得してたんです。

 それも、ただの逃亡ではないんですよ。自分たちをアメリカに最大限高く売るために、ロケットの完成品数十台と、
組み立て済みの部品全て。さらには図面とか実験データの写し、などなど。

それら、列車の貨車にして200台とか500台分と言われてる研究成果を全て持ち逃げしたんです。
 この辺りの戦略家ぶりというのも、ビル・ゲイツっぽいと思います。

 まあ、結局“捕虜”としてアメリカに輸送されることになったんですけど。
 その後も「俺達は科学者だ! 捕虜じゃない! ロケットを作らせろ!」と抗議するものの、聞き入れられず、
「お前らには、もう用はない」と言われて、ホワイトサンズという砂漠地帯の中で冷や飯を食らわされることになるんです。

 でも、そうなったらそうなったで、今度は時の人であったウォルト・ディズニーに接近して、
彼のテレビ番組に出演して、自分が主役の科学番組のシリーズを作らせたんですよ。
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