>>866
 でも、この『逆境ナイン』の島本和彦はついに自分のリズムをつかんで、
いきなり大コマでぐぁーっと主人公が現れて、「野球部キャプテン不屈闘志、入ります」「廃部だ!」って言ったら、
どーんって吹っ飛ばされて、そしてナレーション、つまり作者自身の声で
「逆境とは自分の思い通りにならない状況のことを言う」というドカーンと入ってくるというふうなところからくると。

 で、そこからお話がさんざん転換して、「フッフッフ、校長」っていうふうなことで、
何かこう目が生き返って、何か言おうとしてるわけだよね。

「この校長室には、甲子園の優勝旗がありませんね。俺たちが」って言って、「いや」と言って黙ってしまう。
 で、ナレーションで「この男は今、大きな風呂敷を広げようとしている」っていう(笑)。

 「だが、その風呂敷はあまりにもおっきい」という、マンガではあり得ないようなナレーションが入って、
風呂敷をバッと広げた絵があって、「校長、この隅にでっかい優勝旗が欲しいと思いませんか」っていう展開になるというですね。

 この後、こう段々と段取り台詞がこういうふうにあった後、すいませんね、
見せられなくてですね、第1話がザーッとあるんだ。

 で、ザーッとあって、最後のほうで「そう、もうおわかりだろう、この男こそ本編の主人公である。
君たちの夢を叶えてくれる不屈の闘志を持つ男。それがこいつ。その名も不屈闘志だ!」っていう、これでね、第1話だよ。

 もうね、なんというか馬鹿なのは判ってるんだ。この作者が馬鹿なのはべつに今に始まったことではなく、
時は1980年大阪芸大の頃から馬鹿だったんだけども、こんなかっこいいマンガ、描いてくれるんだよ。

 こんなかっこいいマンガを描いたあとの、こいつのまた駄目っぷりがいいんだよね。

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