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 その後、「このコダマが後にトトロになったということにしませんか? でないと、アニメーターとして参加してて、
この『もののけ姫』という物語はあまりにもやりきれないです。なんで人間というのはこんな事をしてしまうんだって。
最後には希望が欲しいし、これがトトロということにしませんか?」と言ったら、宮崎駿は「ああ、いいね! その設定、採用!」と。
 つまり、宮崎さんは二木さんが考えた設定を採用しただけなんですよね(笑)。

 なので、トトロというのは、公式設定では「1302歳」と書いてあり、その他のいろんなところには
「実は『もののけ姫』のラストに出てくるコダマが成長した姿らしい」とか書いてあるんですけど。これらは“後付け”なんですね。
 本当はもっと古い存在なんですよ。

 宮崎さんのインタビューによれば「トトロは3000年以上生きている」と書いてあるんです。
 これは、公式設定での1302歳とか、『もののけ姫』のラストシーンで生まれたという話とは、明らかに桁が違う年齢です。
 ……この辺が「子供が聞いてもしょうがないトトロ」なんですよ。「おじさんが『となりのトトロ』の話をするよー!」と言って、
こんな話を始めたら、子供は途中でグーグー寝てしまうと思うんですけど。
「大人向けなら、こういう話もできるよな」と思いながら喋ってます(笑)。
・・・
 ジブリが公式として出している、文芸春秋の『ジブリの教科書』というシリーズがあります。
その『風立ちぬ』の号の中で、鈴木敏夫さんはこんなふうに言っているんですよ。

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 もともと宮さんは、トトロについてこんな妄想を膨らませていました。
 かつてこの世には、たくさんのトトロ族がいた。彼らは人類と戦って滅ぼされたが、その生き残りがいろんな時代に登場する。
 中世なら「もののけ」、江戸時代には幽霊、そして、今は『となりのトトロ』……。
 トトロはそういう歴史を背負っている存在なんです。ただかわいいだけの生き物じゃない。恐ろしさも含んでる。

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 まあ、なかなかショッキングな発言です。
 『となりのトトロ』を見ている人というのは、普通は「現代の日本は、この話の舞台である昭和30年代の綺麗だった日本から
自然が失われてしまった。だから、トトロもいなくなってしまったんだ」と思いがちなんですけど、これは違うんですね。
 「トトロたちはかつて、人間と戦って滅ぼされた」というのが、宮崎駿がもともと思っていた『となりのトトロ』のプロットなんですよ。
・・・
 じゃあ、その戦いとは何だったのだろうか?
 と、その前に、もう1つ、トトロの特徴というのを考えてみましょう。

 これは、メイが初めてトトロに出会ったシーンです。
(パネルを見せる)  http://livedoor.blogimg.jp/okada_toshio/imgs/b/d/bdd5a497.png