>>295
 でも、乙事主は『もののけ姫』の中で、「見よ。今の我らの眷族を。
身体は小さく、すでに言葉も話せない」と嘆いています。

 つまり、乙事主たち猪神の一族は、『もののけ姫』のラストで描かれる人間との直接対決で衰退したわけではないんですよ。
 では、なぜ滅びたのか? ……トトロが滅びた理由を説明するためには、『もののけ姫』の話をせざるを得ないんですよね(笑)。
・・・
 これを見てください。

(パネルを見せる) http://livedoor.blogimg.jp/okada_toshio/imgs/d/f/df7905a2.png

 これは、1万年前から現在に至る平均気温の移り変わりを表したグラフです。
 1万年前というのは、今より平均気温が5度低かったんです。
しかし、それが縄文時代に入る頃には、今より+2度、つまりそれ以前の時代から比べると、
7度から8度も上がっているんですね。

 現代より平均気温が5度も低かった2万年前の日本がどういうことになっていたのかというと。
 水というのは寒ければ縮小するし、暑ければ膨張します。
地球が温暖化すると、なぜ海面が上昇するのかというと、「南極の氷が溶けるから」というよりは
「海水自体が温度が上がることによって、やや膨張するから」なんですね。

 つまり、「今よりも平均気温が5度低い」ということは、「今よりも海面が低い」ということです。
その結果、日本は列島ではなく、半島みたいな形で浮かび上がっていたわけです。

 しかし、このグラフに示されている通り、7千年前に、平均気温が一気に7度も上がってしまいました。
これによって海面が100m近く上昇したと言われています。

 この時に、日本の陸地のかなり部分は水没しました。
この時代は、今よりも遥かに多くの土地が海に沈んでいたんです。
乙事主たち猪神やトトロ一族といった古代の日本の神々を育んだ巨大な森も、その大部分が失われてしまったんです。

 今の近畿地方なんかも、もう本当に水浸しになっていました。
「昔、この辺は海だった」というのは、この6千年前から7千年前の気温の上昇が原因なんです。
・・・
 おまけに、“鬼界カルデラ”って聞いたことありますか? 九州の鹿児島の沖の方にある火山なんですけど。
現在も、ドーム部分にマグマが溜まり始めていて危険だと言われている場所です。

 7300年前、この鬼界カルデラの大噴火というのがあったんです。
これはもう、本当に「次にこんな噴火があったら、人類は滅ぶんじゃないか?」というレベルの大噴火でした。