>>112
 ここには「アニメ地獄」って書いてあります。これは、他の人にとっても地獄なんですけども、
一番の地獄の只中にいるのは手塚治虫自身なんですよ。

 そんな地獄へ自分を追い込む時のやり方というのが、「はい! それも手塚がやります!」とにこやかに引き受けて、
全部持って行くという方法なんですね。
http://livedoor.blogimg.jp/okada_toshio/imgs/f/f/ffce0082.png
・・・
(中略)

 その結果、なんと、奇跡的なことに、『バンダーブック』はオンエアされることになりました。
 まあ、「オンエアされた」と言っても、ギリギリの状況だったんですけども。

 当時のアニメーションというのは“フィルム”に現像されていました。2時間分のアニメだから、
35ミリフィルムにすると、10巻くらいの束になると思うんですけど。

 どれくらいギリギリだったかと言うと、「1巻目をロールにかけて映写している時に、
まだ最後の巻が納品されてなかった」と伝えられています。

 つまり、テレビ局でのアニメ放送が始まっているのに、最後のリールは、まだ現像所で現像して乾かしているような状態だったんです。
だけど、アニメは作られました。本当にすごいです。

 よく、アニメ界の伝説として「放送当日にギリギリ間に合った」という話があるんですけど、それどころの騒ぎじゃないんですね。
「1巻目を放送している時に、最終巻が出来上がった」んですから、もう日本のアニメ放送史上、空前絶後の事態です。
・・・
 ところが、そんなアニメだったにもかかわらず、『バンダーブック』の視聴率は、
24時間テレビの中でトップの28%を取っちゃうんですよね。

 日本テレビの24時間テレビ『愛は地球を救う』の第1回放送なんですよ?
だから、24時間テレビの中の他の番組も、軒並み視聴率が良かったんですけど。
その中でも、ぶっちぎりの1位を『バンダーブック』が取ってしまったんです。

 なので、その後も、延々と手塚治虫のアニメが作られることになってしまいました。
“アニメ地獄”というのが、ずーっと続くことになったんですね。
 この後も、何回もスペシャルアニメをやって、その度に、視聴率的には大成功したんですよ。
でも、ギリギリの進行は相変わらずです。