>>111
 おまけに、この当時の手塚治虫というのは『ブラックジャック』で復活した後で、
漫画の連載もそこそこ抱えているんですよ。なので、ただでさえメチャクチャ忙しいもんだから、
『バンダーブック』の製作というのは、どんどん遅れて行くんです。

 そして、ついにオンエアの2ヶ月前、制作デスクが失踪してしまうんですよね。こ
の人、本当にどこかに行ってしまって、いまだに見つかってないんですよ。

 この辺りの詳しい事情については、『ブラックジャック創作秘話』という漫画の
「アニメ地獄」というタイトルの話の中に描いてあります。
・・・
(中略)

 手塚治虫というのは、とにかく、アニメ制作をする中で、何か困ったことがあったら、
打ち合わせと称して「それは私がやります!」と言うんです。だけど、それをやっても同じなんですよね。

 そもそも、「脚本は全て私が書く! コンテも私が切る!」と言っていたから、こんな困った状況になっているわけなんです。
原因は、手塚先生が「全部、自分がする」ということにこだわっているからなんです。

http://livedoor.blogimg.jp/okada_toshio/imgs/0/1/01d0970c.png

 そんな中、制作が遅れてきたらどうなるのかというと、やっぱり「全部、私がやる!」と言う。
 結果、どうなったのかというと、もう本当に、手塚さんは寝る時間もなくなってしまいます。

 放送2ヶ月前に制作進行が失踪してからというもの、手塚さんは毎日ほとんど寝ずに、
ずーっとアニメを作り続けている。だから周りも、もう、何も言えなくなっているわけですよ。

 というのも、手塚治虫が誰よりも働いてるから、そこでこれ以上手塚さんを責めるわけにはいかないんです。
責めることで時間が5分でも取られるくらいなら、その分、5分でも何かを描いてくれた方が状況がマシになるじゃないですか。

 だけど、そんな手塚治虫も、あまりにも追いつめられると、別の部屋へ逃げてしまいます。
 では、別の部屋で何をやっているのかというと、別の連載漫画を描いているわけですね(笑)。

 そして、連載漫画が煮詰まって「もうダメだ!」となると、アニメフロアに降りてきて、
アニメを作るという、本当に、地獄のような日々を過ごしていたそうです。