>>592
 そして最後には、サリマンに騙されて連れ込まれた部屋で、
周りから電球の光でガッと照らされて“影”がなくなっちゃったんです。
そして、この荒れ地の魔女というのは力を失ってしまった。
 こんなふうに、それぞれの魔法使いには弱点というのがあるんです。

 というわけで、2番目に出てきたのは、荒地の魔女という、光に弱い魔女でした。
・・・
 3番目に出てくる魔法使いは“カカシのカブ”です。

 このカカシについて、「最後の最後で唐突に呪いが解けて王子様になった」
というバカみたいな役だとついつい思っちゃうんですけど。これ、違うんですね。

 例えば、中盤でソフィーが洗濯物を干すシーンというのがあるんですけど。
この時、カカシは自分からそれを手伝うんですよ。「ああ、洗濯物が好きなんだな」というふうに、
マルクルもソフィーも言うから、映画を見ている人はついついその言葉を信じちゃうんですけど。

カカシは、その時、遥か山の彼方を、じーっと見つめているんです。
 これ、何かというと「故郷に帰りたいな」と思っているに決まってるんですよ。
高いところに立って、山脈の向こうにある隣の国を見ているんですね。
 こいつは、そうやって人間に戻るチャンス、国に帰るチャンスというのをずーっと探しているんです。

 では、そんな彼がなぜ魔法使いなのかというと、このシーンですね。

(パネルを見せる)
http://livedoor.blogimg.jp/okada_toshio/imgs/b/a/ba340802.png

 これ、ちょっとわかりにくいんですけど、最後にサリマン先生が、
水晶器の中に映ったソフィーたちの様子を覗いているシーンです。

 ここで、ソフィーたちが手を振っている中、やっと王子様に戻れたカカシは、
棒に乗ったまま空を飛んで国に帰るんです。

 変ですよね? もう呪いは解けてるはずなのに。
 じゃあ、なぜ棒に乗って空を飛んで帰るのかというと、「こいつが魔法使いだったから」に決まってるんですよ。

 でも、王子なのに魔法使いって、これまた変でしょう?
 だって、ハウルたちがいる国では、王様は魔法を使えないからこそ、科学の力で戦おうとしているんですよ。
だからこそ、サリマンが王立魔法学校というのを作って魔法使いを育成しているんです。

 ということは、この王子の故郷である隣の国というのは、ハウルたちの国とは国体が違うんですよ。
王子が魔法使いということは、隣の国ではもちろん王様も魔法使いのはず。つまり“魔法使いが建国した国”なんですね。

 この描写から読み取れることは「ハウルたちの住む国の隣には“魔導帝国”というのがある。
そして、それが軍事的に恐ろしいからこそ、科学の力を利用して戦おうとしている」ということなんです。

 『進撃の巨人』でいう“マーレ”みたいなものですね。そうやって科学&魔法の力で、
隣国の巨大な魔法力に対抗しようとしているわけです。