>>432
 僕、今回の放送の予告として、メルマガとかに「『ハウルの動く城』はジブリ初の「敗戦処理」」って書いたんですけど。
これ、どういうことかと言ったら、この作品って、ヨーロッパで受けが悪かったんですよ。

 当時、フランスでは『千と千尋の神隠し』を中心とした大規模な美術展をやっていたんです。
その美術展にはお客さんもいっぱい入りました。この時に『ハウルの動く城』の宣伝を行って、
その後に公開したんですけど。

 ところが、『もののけ姫』や『千と千尋の神隠し』での大評判に比べて、『ハウルの動く城』っていうのは、
フランスを始めとするヨーロッパでは、やや受けが悪かった。あくまでも「やや」なんですけどね。

 その理由は何かというと「なぜ日本の話をやってくれないんだ? ハヤオ・ミヤザキの作品は
現代の日本というのが見れてすごく良いのに、なぜ、こんなヨーロッパのモノマネ世界を舞台にするんだ?」
と思われたからなんですよ。こんなふうに言われた宮崎さんは、やっぱり悔しかったみたいなんですけど。

 その一方で、細田版のコンテを見てみると、ちゃんと現代の世界観になっているんですよね。
なので、そこら辺も含めて「細田さんが監督をやっていたら、評価も影響も今とは違ったのかな?」と思います。

 宮崎さん自身も、ヨーロッパを舞台にすることには、すごく迷いがあったそうです。
 例えば、一番最初に主人公のソフィーという女の子が街に出かけるシーンがあるんですけど、
彼女が街を歩く時、どう動かすべきかということに悩んだそうなんですよ。

 実は、19世紀末から20世紀初頭のヨーロッパの女の人というのは、表を歩く時に、
絶対に肩も腕も動かさず、下半身だけ動かしてスススっと歩くんですよね。
でも、そうやって動かすと、主人公のソフィーが、なんだか必要以上にツンと構えた印象になってしまう。

 その結果、宮崎さんも悩んだ末に、ソフィーが歩く時にも現代日本人の女の人みたいに
普通に両手を動かして歩くようにしたんですけど。
そしたら、やっぱり、そこら辺について「宮崎駿は19世紀ヨーロッパをわかってない」とか、
いろいろ言われることになって、宮崎さんも悔しかったそうです。

 この細田版のハウル、せめてコンテ集だけでも表に出してほしいんですよね。
 だけど、ジブリとしては、徹底的に封印するつもりらしくて、出てこないんですよ。

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