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 では、なぜそれが分かりにくいのか?
 それは「この作品では、ほぼ全編に渡ってソフィーという主役の女の子の視点のみで語っているから」なんです。

 1人の登場人物の視点だけで物語を語るのがどれくらい難しいのかということを説明するために、
ここでは「もし『カリオストロの城』をクラリスのみの視点だけで語るとどうなるのか?」というのを、
ちょっとまとめてみました。
(パネルを見せる)
――――――
1. 修道院から本国に戻る
2. エロいオヤジとの結婚がイヤで車で逃げる
3. 事故を起こして連れ帰られ、塔に閉じ込められる
4. 泥棒さんが助けに来てくれるけど、落とし穴へ
5. 泣いてたら家庭教師の不二子が窓をぶちこわす
6. 泥棒さんが殺されかけたので降服する
7. 薬を飲まされてよく覚えていない
8. 気がついたら教会でドレス。泥棒さんが殺された!
9. と思ったらウソで、泥棒さんと時計台に逃げたら捕まる
10. また泥棒さん殺されかけたので、ダイブして助ける
11. 夜が明けたらインターポールが来て,泥棒さん逃げる
12. 連れてって、と行ったけどダメ。あー私は恋をしたんだわ。
――――――
 わかりやすいストーリー展開だった『カリオストロの城』が、視点を固定するだけでどう変わってしまうのか?
 あの映画の主役がクラリスで、彼女の視点だけで語るとするならば、
まず最初は「修道院から本国に戻る」というシーンから始まります。
 そしたら、エロいオヤジとの結婚を仕組まれていて、それが嫌で車で逃げだす。
 だけど、途中で事故を起こして連れ去られ、塔に閉じ込められちゃった。

 その次には“泥棒さん”が助けに来てくれるんだけど、落とし穴に落ちちゃった。
 そして、泣いてたら自分の家庭教師の不二子が窓をぶち壊す。
 その後で、泥棒さんがまた助けに来てくれたんだけど、罠にかかって殺されかけたので、
仕方なくなんかエロいオヤジに降伏することにした。
 それから先は、薬を飲まされていてよく覚えてない。

 ハッと気がついたら、教会でウェディングドレスを着せられて、目の前で泥棒さんが殺された。
 「いやー!」って言ってると、泥棒さんは実は生きていて、一緒に時計台に逃げたら、また捕まっちゃう。
 で、また泥棒さんが殺されかけたので、湖へ飛び込んで助ける。
 夜が明けるとインターポールが来て、泥棒さんは「うわぁー怖いおじさんが来た」と逃げちゃう。
 最後に、「好きです。連れてって!」と言ったんだけど、ダメ。「ああ、私は恋をしたんだな」で、終わる。

 あの面白い『カリオストロの城』が、クラリスの視点に固定するだけで、ここまでメチャクチャになるんですよ。
 これくらい、1人の人間の主観だけで物語をまとめるのは難しいんです。
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