>>904
 ちなみに、この『母をたずねて三千里』は、宮崎・高畑コンビの最後の作品でもあります。
 その後にも、『赤毛のアン』などで、宮崎駿が高畑さんのアニメを手伝うこともあったんですけど、
本格的にガップリ4つに組んだのは、これが最後です。

 この19世紀のイタリア・ジェノバで、マルコ・ロッシのお父さんのピエトロ・ロッシは、
貧しい人たちへの病院を経営していたんです。
でも、病院を経営していただけで、彼は医者ではないんですよね。「事務員」なんですよ。

 僕も、アニメを見ていた時は、病院を経営してるんだから、てっきり医者だろうと思ってたのに、
「貧乏だ、貧乏だ」ってずっと言ってて、なんでだろうって思ってたんですけど。

なぜかというと、病院の経営を任された事務員で、医者のワガママを聞きながら、なんとか経営をしていたからなんですね。

 さて、この病院が経営破綻して、どうにもこうにも倒産しそうになったので、
マルコのお母さんであるアンナ・ロッシは、アルゼンチンのブエノスアイレスに出稼ぎに行くことになってしまいます。

 なぜ、アルゼンチンなんていう、南アメリカの遠い所まで出稼ぎに行くのかというと、
実は19世紀後半から20世紀の頭まで、アルゼンチンというのは世界で最も豊かな国だったんですよ。

 当時のアルゼンチンは、農産と牧畜によって農業大国として、かつての豊かなアメリカと同じように大成功していて、
「そこに行けば誰もが金持ちになれる」と言われる国だったんですね。

 なので、マルコのお母さんも、奉公に行ったんです。
まだ9歳の子供だったマルコ・ロッシ君はお母さんを恋しく思います。

 ところが、お母さんが旅立ってから数ヶ月もすると、それまでアルゼンチンからしょっちゅう届いていた手紙が、
だんだんと滞るようになってきて、やがてパッタリと届かなくなってしまいます。

 それと同時に、お父さんに仕送りしていたお金も来なくなってしまうんですね。
 マルコは、すごく心配して、友達だったエミリオ少年に頼んで、瓶洗いの仕事を紹介してもらいます。

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