岡田斗司夫プレミアムブロマガ
「『母をたずねて三千里』で描かれた機械による失業」
2018/8/13 7:00
http://blog.livedoor.jp/okada_toshio/archives/51549841.html

【『母をたずねて三千里』で描かれた機械による失業 】

 さて、ここからは話がちょっと古くなります。時は19世紀末、1882年イタリアのジェノバの話です。

 1882年というのは、ちょうどガウディがスペインでサグラダファミリアの建設を始めた年なんですけど。
まあ、それくらい古いとも言えますし、わりと最近でもあります。

 この年、イタリアのジェノバに暮らしていた9歳の男の子が「学校を辞めて働こう」と決意しました。
 ……すみません。とはいえ、これは実在の人物ではありません。
マルコ・ロッシ君という『母をたずねて三千里』の主人公です。

 『母をたずねて三千里』というのは、『ハイジ』が大ヒットした後、別の人が1年間『フランダースの犬』を作っている中、
1年間休憩した後で、宮崎駿・高畑勲コンビが作った長編アニメシリーズです。

 いや、高畑勲は監督だから、この場合「高畑・宮崎コンビ」と言わなければいけませんね。
宮崎駿は画面設計を担当していました。僕はこれを、高畑・宮崎コンビの最高傑作だと思っています。

 この『母をたずねて三千里』の原作は、昔の小学校の学級文庫によく置いてあった『クオーレ』という、
イタリアの子供たちの道徳の本です。これは「イタリア人の子供なら、だいたいみんな読んでいる」と言われる本なんですけども。

 高畑勲は、その中に収録されていた40ページくらいしかない短編小説を、無理矢理全50話くらいに引き伸ばして、
1年間のアニメシリーズに仕上げました。これを1年間のシリーズにするために、高畑勲は、
『ハイジ』でやった時以上に徹底的に、19世紀末のイタリアの風俗を調べ上げたんです。

 興味のある人は『クオーレ』を読んでみてください。あっという間にマルコとお母さんは再会を果たしてビックリしますから。
日本人がよく知っている『母をたずねて三千里』の物語というのは、高畑勲のオリジナルだなあと思いますよ。