>>554
 今、見たら無茶なんですけど、「海から上がってきたスピノサウルスが、ティラノサウルスと戦って勝つ」
ということをやってるんです。まあ、これが公開された当時、みんな「なんか違うな」とは思ったんですけども、
化石も何も残っていないから、誰も文句が言えなかったんですよ。

 しかし、2014年にモロッコで、もっと良い骨格が見つかってしまったんですね(笑)。
 そして、それを調査した結果、スピノサウルスというのは、シーラカンスとかをパクパク食べているような、
パワーは強いしサイズはデカイんですけど、所詮は魚を食べている海の恐竜で、顎の幅も小さいので、
とてもティラノサウルスと戦えるような恐竜じゃないということがわかったんですよね。
 なので、今となっては『ジュラシック・パークV』は完全に“古い学説の映画”になってしまいました。
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 でも、なんといっても『ジュラシック・パーク』シリーズにおける最大の嘘というのは“ティラノサウルス”なんですよ。
 まあ、嘘が入っているという意味では、今、売られているようなフィギュアも全部そうだし、
ティラノサウルスの復元図とか、映像とかでも、全部、同じ嘘をついてるんですけども。

 では、何が嘘かと言うと「歯が剥き出し」なんですよね。
 歯が剥き出しになっている復元図は、だいたい嘘だと思ってください。これね、カッコいいからこうしちゃうんですよ。

 人間って、歯が剥き出しになってないじゃないですか。ちゃんと“唇”というのがありますよね?
この唇というのは何のために付いているのかというと、「唾液がダラダラと外へ溢れないため」に付いてるんですよ。

 「唇がなかったら、人間というのは1日当りだいたい1.5Lの水分を失う」と言われています。
人間が1日生きるのに必要な水分量が1.5Lですから、もし唇がなかったら、
人間というのは摂取した水分を延々と垂れ流していくことになり、生き残れなくなってしまいます。

 ティラノサウルスに関してもそれは同じはずなのに、ところが、ほとんどの復元図では、
こう、牙を剥き出しにしちゃうんです。なぜかというと、ワニが牙を剥き出しにしているからです。

 でも、ワニというのは基本的に水中にいる動物だから、牙を剥き出しにしててもいいんですよ。
いつでも水分を補給できるから。ところが、地上にいる爬虫類というのは歯を剥き出しにしていてはいけない。

 そんなことはみんな知っているんですけど、この方がカッコいいから剥き出しにしちゃうんです。

 もちろん、博物館によっては、置いてある復元図にちゃんと唇がついていて、牙が隠れてるんですけども。
 だけど、やっぱり、そういう絵は人気がないので、みんな、ついついこの歯のある方を出してしまうんですね。
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 あとは、『ジュラシック・パーク』シリーズに出てくるティラノサウルスは、いつも全力疾走で走ってますけど、本物は走れません。
そんなスピードは出せないんです。

 ティラノサウルスというのは、最大でも、だいたい時速12〜15kmくらいの速度しか出せなかったと言われています。
つまり、人間が全力疾走するよりも、ちょっと遅いくらいの速度です。