>>875

 ここでもやっぱり、「おい、見てくれよ! この家では、壁に配管があって、そこにガスも電気も水道も、なんでも通ってるんだ!
外を見てくれよ! “電車”だよ! わかる? 電気の力で列車が走ってるんだ! もう汽車に乗る時みたいに煙に囲まれなくてもいいんだよ!
こんな“冷凍食品”みたいなものもできてきたよ? これはオーブンで温めるだけで食えるんだぜ? すごいよ、今が文明の頂点だよ!」
ってにジョンが言って、「Now is the time.〜♪」って歌うんですよ。

 4つのステージを仕切る壁の一部は回転舞台になっていて、ジョンが奥さんとか娘とかを呼ぶと、この回転舞台がくるりと回転して、
奥さんが出てきて「今、お風呂で頭を洗ってるの!」とか、「今、アイロンをかけてるの!」とか言うんですけど。
この部分も、時代が進むに連れてどんどん進化して行くんですよね。


 そして、第3ステージでの合唱が終わると、最後は第4幕の現代のクリスマス・イブが描かれます。

 ここでは、ジョン一家は“電気ストーブ”で七面鳥を焼いていて、「なんて豊かになったんだ!」っていうんですけど
「全自動ストーブの使い方を誰もわかってなくて、七面鳥を焦がしてしまう」というオチで終わります。
・・・
 この4つの時代でのポイントは、それぞれ「今が一番良い時代に違いない!」というふうに、
登場人物たちが思い込んで歌っているところですよね。

 この「今の科学って素晴らしい!」というのは、あくまでも、舞台の上で喋って歌うロボットたちのセリフなんですよ。
実は、この回転する客席に乗りながらショーを見ている僕ら観客というのは、そうは思ってないというところが重要なんです。

 このセリフを聞いても、それに共感して「確かにこの時代が一番良いな」とは思わない。
そうではなくて「どの時代でも『今が一番良い』と思ってるんだな。ということは、俺達の明日というのも、
今よりも、もっと面白いのかもしれないな」というふうに、自然に思えるようになっているんですよ。

 繰り返しますが、キャラクターのセリフとしては、そんなことは一切、言ってないんですよ。
セリフでは「この時代が一番良い!」って言ってるわけですから。

 ところが、それを見ている僕たちは「その時代に生きている人間というのは、“今”しかわからないから、
将来というのが見えないんだ。でも、俺達観客は違うよね」ということがわかる。