>>838
 宮崎さんは、この風刺画を一枚使って「当時、極めて危うくなっていたナポレオンの財政を
カリオストロ公国が後押ししていた」というふうに説明しているわけですね。

 ちなみに、ルパンの台詞にある「ブルボン王朝を破滅させた」というのは何のことかと言うと。
 革命前夜のフランスで「マリー・アントワネットの首飾り事件」というのが起きました。
マリー・アントワネットの親友だと騙るジャンヌ・ヴァロワ夫人という人物が、宝石商から4000億円くらいする首飾りを騙し取って、
その請求がマリー・アントワネットに届いたという事件です。

 後に、これはジャンヌ・ヴァロワが働いた詐欺であったことがわかったんですけど、これが当時、
フランス中を揺るがす大スキャンダルになりました。その中で、マリー・アントワネットはレズビアン疑惑まで掛けられて、
裁判までやったんだけども、詐欺の黒幕にいたヤツらは無罪放免にされてしまいます。

 結果、パリの市民はマリー・アントワネットに対してすごい反感を持つようになり、
これがフランス革命の1つのきっかけにもなったと言われているんですね。

 この事件の中で、マリー・アントワネットに、すごく高価な宝石を押し付けようとした実在する人物として
「山師のカリオストロ伯爵」という男がいました。

 この「伯爵」というのは自称していただけなんですけど。こいつは、
錬金術師であり、フリーメイソンのメンバーであったと言われています。
まあ、その正体はイタリアのシチリアに住んでいるただの田舎者だったんですけど。

 さて、このカリオストロ伯爵の正体を調べ当てた人がいたんです。
誰かというと、当時、ドイツに住んでいた、文豪であり、政治家であり、思想家でもあった「ゲーテ」という男です(笑)。

 首飾り事件を聞いたゲーテは「けしからん! カリオストロ伯爵の正体を俺が突き止めてやる!」と言って、
単身イタリアに赴き調査を積み重ね、それを『イタリア紀行』という本にまとめ、
「ついに俺はカリオストロの正体を突き止めた!」と発表しているんです。

 まあ、とにかく、この首飾り事件というのは、それくらいの大事件だったんですね。

 宮崎さんは、この山師カリオストロという、錬金術師でありフリーメイソンだった男の名前から、
「カリオストロ伯爵」という名前を拝借しています。
 この「錬金術師」を覚えておいてください。

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