>>837
 「下カリオストロ」と呼ばれた伯爵家の仕事は、実は謀略と暗殺だけであり、偽札にはほとんどタッチしなかった。
では、偽札の製造は誰が行っていたのかと言うと、「上カリオストロ」と呼ばれるクラリスのいる大公家の仕事だった。

 僕はこんなふうに考えているんですね。

(中略)

 これは、地下牢から脱出して、偽札の印刷所を見つけた銭形から「これはなんだ!? 説明してくれ!」
と言われたルパンが「これはゴート札の心臓部だ」という話をする時に表示される絵です。

 この絵をバックに「中世以来、ヨーロッパの動乱の影に必ずうごめいていた謎の偽金。
ブルボン王朝を破滅させ、ナポレオンの資金源となり、1972年には世界恐慌の引き金にもなった。
歴史の裏舞台ブラックホールの主役、ゴート札。その震源地を覗こうとした者は1人として帰って来なかった」と、
ルパンが名調子で喋ります。

 さて、この絵の意味することが、みなさんにはわかるでしょうか?
 この絵からは「初期のカリオストロ家は金貨の偽造をやっていた」ということがわかります。
つまり、カリオストロが紙幣を作り始めたのは、ほんの100年くらい前だということなんですよ。

 というか、そもそもヨーロッパにおいて紙のお金が使われたはじめたのは19世紀なんです。
 「ソブリン金貨」というものを知っていますか? 『パイレーツ・オブ・カリビアン』とかに出てくる海賊は、
みんな金貨を持ってますよね。あれはスペイン金貨かイギリスのソブリン金貨なんですけども。

 19世紀のイギリスでにソブリン金貨というのが発行された時、金貨を多く持ち歩くのは煩わしいから、
銀行がそれと同じ値打ちを保証する「銀行券」という紙を発行したんです。これを「兌換貨幣」というふうに言います。
この19世紀にイギリスが発行した銀行券が、今の僕らが持っている千円札とか5千円札とか1万円札の大本にあるものなんですね。

(中略)

 これは、フランス革命当時に描かれたナポレオンの風刺画を、宮崎さんが描き直したものなんですけど。
 手にしたサーベルで地球儀を貫いているナポレオン。しかし、その地球儀には導火線がついており、
さらには彼の担いだ金袋には穴が空き、金貨がこぼれ落ちています。

 これはどういう意味かというと、「ナポレオンは、一生懸命、世界征服を目指していたんだけど、タイムリミットが近づいている。
なぜかというと、彼の財布は破けている。つまり、破産仕掛けているからだ」ということなんです。