>>189
 さらに、宮崎駿は、ルパンの愛銃として設定されていた“ワルサーP38”にも噛みつきます。
 「ワルサーP38というのは、ドイツ軍が正式採用した拳銃であって、何十万丁、何百万丁も作られたものだ!
フランスの貴族でブランド主義の男なら、そんな量産品の安物拳銃を使っているはずがねえだろ!」
と文句を付けていたそうです(笑)。
・・・
 他にも、「当初作られた設定では、登場人物に深みがない」という部分についても、宮崎駿はすごく攻撃しました。

 もともとの設定を考えた大隅さんは「『ルパン三世』というのは、トムとジェリーだ」と言っていたんですね。
 「トムとジェリー仲良く喧嘩しな」というように、ジェリーというネズミが逃げて、トムという猫がムキになって追いかける。
それと同じく、ルパンが逃げて、銭形がムキになって追いかけるというコメディをやろうとしたんですけど。

 宮崎駿はこれも大嫌いでした。「そんな当たり前のことを今更やってどうするんだ!?
5分のアニメを1本や2本作るだけならともかく、それでTVシリーズが何本も作れるわけがない!
なにより、そんなものを作るために、俺や高畑勲が青春を燃やすことが出来るはずがない!」と。

 この辺の「人物に深みが生まれないから、単なる追いかけっこはダメだ」というのは、
『カリオストロの城』以前にも、すでに1971年の段階で、宮崎駿はすごく強く主張してたんですね。

 この時に、宮崎駿ははっきりと「ルパンが面白かったのは、1968年の原作漫画が連載されていた当時であって、
1971年となった今、もう彼の居場所はどこにもない」と語っています。これは、企画書にも書いているくらいです。

 つまり、「いつまでも、シャンパンみたいな高級な酒を飲んで、世界に何台しかない名車を乗りまわす
なんていうルパン像はダサくてしょうがない。そうじゃなくて、ポンコツ車に乗っているハングリーなルパンというのを描きたい」と。

 宮崎駿のこういった思いもあって、視聴率が低迷していた『ルパン三世』は、第1シリーズの途中で路線変更することになりました。

 まあ、最初に決めたフランス貴族という設定も、なんだかんだ残り続けたんですけど。
だからこそ、『ルパン三世』の第1シリーズというのは、それらが上手いことごちゃまぜになった不思議な魅力があるんですよね。
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この記事は『岡田斗司夫ニコ生ゼミ』3月11日(#221)から一部抜粋してお届けしました。

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