>>916
 このオマキザルの実験によって、これまで人類特有だと思われていたような行為は、
オマキザルの社会でもあっという間に流行るということがわかりました。

 ただし、これをやってしまったおかげで、オマキザルの社会はすごい勢いで崩壊したそうです。
野生のオマキザルが持っていた社会性は、貨幣という概念が1つ入ったことで変質していって、
オスとメスとが互いに交尾相手を見つけるのも上手く行かなくなり、あっという間に社会が崩壊してしまいました。

 そんな、なんかなかなか面白いことが言われています。
・・・
 今回話すのは、その中で行われたノー・フェア実験というものです。

 まず、オマキザル2匹を1組のペアにするんです。そして、この1組のペアに、
それぞれ1匹ずつ、違う条件を与えるんです。

 両方に、「トークン1枚を持ってくると、その度にキュウリを与える」という、
同じ条件を与えると、オマキザルは喜んでキュウリを食べるんです。

彼らにとって、キュウリというのは、好物というわけではないんですけど、
おやつとしては美味しいから、パクパク食べるんですよ。

 でも、オマキザルが一番好きなのは、ブドウなんですね。トークンを持ってきた時に、
ペアになった2匹のオマキザルに、ブドウ1粒ずつあげると、すごく喜んで食べるんです。

 さて、ここからが実験です。では、一方にだけブドウを与えて、もう一方にキュウリを与えるとどうなるのか?
 ブドウを貰ったオマキザルは喜んで食べるんですけども、キュウリを貰ったオマキザルはすごく不思議そうな顔をするんですね。
そして、もう一度、人間の方に手を出して「俺にもブドウをくれ」という顔をするんですよ。でも、与えない。

 これを何度も続ける内に、どんどんストレスが溜まってきて、ついにはオマキザルは不思議な行動を始めるんですね。

 1日に何回か、オマキザルにはトークンが与えられる。そのトークンという貨幣を持って交換に行くと、
自分とペアのヤツはいつもブドウが貰えて、自分はキュウリしか貰えない。

 すると、ストレスが溜まったオマキザルは、最終的に、キュウリの受け取りを拒否するんですよね。

 不思議なんですよ。両方共、キュウリを貰った時は喜んでキュウリを食べていた。
だから、キュウリが嫌いなわけじゃないんですよ。だけど、自分だけブドウが貰えないということに怒ったオマキザルは、
人間の顔にキュウリを叩きつけたんですね。

「俺を公平に扱ってくれないんだったら、こんなキュウリなんかいらねえよ!」って、すごく人間っぽいことを始めてしまった。