>>769
 これは後で話しますけど、僕は、ラピュタの文明というのを“前期ラピュタ文明”、“後期ラピュタ文明”と分けて考えているんですね。
これに関しては、僕なりの論拠もあるんですけども。

 このロボット兵について、僕は「ムスカが思い込んでいるラピュタ像である、
世界を武力で支配するようになった後期ラピュタ文明の産物ではないか?」と考えています。
 なので、19世紀の人間たちには理解不可能でも、現代を生きる僕らから見たら、まだ、なんとなく理解できないことはないんです。

 どの辺が理解できるのかというと、ここなんですよ。
(パネルを見せる)

 これは、シータが「我を助けよ」という呪文を唱えた時に、壊れていたように見えたロボット兵が急に動き出すというシーンです。
 この時、ロボット兵のちぎれた腕の断面から、ウネウネした不思議な部品がはみ出てきて、グニョグニョと動くんですけど。
面白いことに、肩から伸びた二の腕の断面からはみ出た部品は動くんですけど、切り離された側の部品は動かないんですね。
この描写から、「なんだかんだ言っても、このロボットは、動力と繋がっているから動いているし、
その動力源はどうやら中央部分にあるらしい」ということがわかります。

 つまり、このロボットは僕らが理解している機械の範疇にあるんですよ。確かに、動きや構造は摩訶不思議で、
生体みたいに見えるんですけど、それはあくまでも「とても複雑」というだけで、まだまだ理解の範囲内の機械なんですね。

 そんな、“現代の僕らには微かには理解可能なテクノロジー”というのが、ラピュタに出て来るロボット兵です。
・・・
 さて、ここから先は、『ラピュタ』の超科学SFの部分に入っていきます。
 『ラピュタ』に出てくる“本当に理解できないSF的テクノロジー”というのは何かというと、飛行石です。
シータが胸から下げているペンダントみたいな石ですね。

 この飛行石は、クラークの言う第3法則「魔法としか思えない機能」を持っています。
 まず、「ラピュタの王位継承者の命令しか受け付けない」。次に、「どう考えても反重力みたいな現象を起こすことが出来る」。
しかも、「そのエネルギー源をどこからも受け取っていない」。

 全て同じアニメの中に描かれているから、ロボット兵も飛行石も、同じように不思議なテクノロジーに見えるんですけど、
この2つの間には明らかに技術的な階層差があるんです。

 さっきも言った通り、ロボット兵に関しては、まだ我々の理解範囲の中なんです。
でも、飛行石の持っているテクノロジーレベルというのは、明らかにそれよりも千年くらいは先を行ってるんですね。

 ロボットとの一番の違いは何かというと“組み立てられないところ”なんです。飛行石には組み立てた形跡が一切ないんですね。