2018年01月23日07:00
SFとしての『ラピュタ』・中編
http://blog.livedoor.jp/okada_toshio/archives/51544074.html

 では、ラピュタに出てくる技術の解説に入りましょう。
 1つ目は、海賊ドーラ一味が自分たちの基地にしている飛行船“タイガーモス号”ですね。

 タイガーモス号は全体ではこんなデザインになっています。
(タイガーモス号のプラモデルを見せる)

 船体後部に付いているプロペラは“四重反転プロペラ”という、かなり複雑な機構です。
ラピュタの世界にある大型機械のほとんどが石炭による蒸気機関なのに対して、
このドーラの船であるタイガーモス号は、ガソリンエンジンを積んでいて、それを回転させることによって、
4つのプロペラがそれぞれ反対側に回るというメチャクチャ複雑な機構なんですね。

 一見すると、左右に付いている大きなプロペラの付いた翼が推進機関のように思われるんですけど、
そうじゃないんです。この大きなプロペラは、上下に傾けることによって垂直上昇をしたり、
それぞれのプロペラのピッチを逆向きにして、方向を急に変える時に使われるという設定になっています。
 そんな、かなり複雑なメカなんですけども。

(パネルを見せる)
 これは、パズーが機関士の爺さんの所に連れて行かれたというシーンなんですけど。後ろには、やっぱり巨大な歯車とかがあります。
 しかし、機械に関する勘の良いパズーは、一瞬で仕掛けを理解して、あっという間に修理を手伝う事ができたんですね。
複雑とはいっても、それくらいのテクノロジーなんです。
・・・
 ただ、翼を動かすところから、四重反転プロペラを回したり、上下プロペラを回すということを、
全て1つのエンジンでやっているので、動力伝達がメチャクチャ複雑です。
 この「動力伝達が複雑」っていうのは、産業革命時代の工場では、実にありがちなことだったんですね。

(パネルを見せる)
 これは、産業革命当時の典型的な大規模工場の風景を描いた銅版画です。
 働いている女工さんの前にある機械の1つ1つから、天井の方に向かってベルトが伸びている。
ベルトは、天井のシャフトに繋がっています。工場の外にある蒸気エンジンの力でこのシャフトが高速で回って、
その力がベルトを経由して各女性の手元まで伝達されることによって、機織り機が動くんです。

 つまり、それぞれの女の人の前には、機織り機という機械はあるんですけれども、
その動力源になっているのは、工場の外に置いてある蒸気エンジンなんですね。

 この工場の、もう少し具体的な写真が、イギリスのランカシャーに残っています。
(パネルを見せる)

 これはイギリスのランカシャーの機織り工場の写真なんですけど、こんなふうになってるわけですね。
上の方に巨大なシャフトが回ってて、その力でベルトが駆動する。

 宮崎駿が描いたラピュタの世界のメカというのは、歯車が付いているイメージが強いんですけど、
よくよく見てみると、こういうプーリーとか、ベルトっていうのも描き込まれているんですね。
・・・