>>746
 1959年に学会が開かれてから後、1960年代前半のアメリカは、まさに“怒涛の時代”です。
 よく「1960年代がどんな時代だったか〜」って言われますね。
61年にケネディがアメリカの大統領になって、月へ人類を送る計画を発動し、
同時に国民の公民権運動がものすごく盛んになって、ベトナム戦争にアメリカが参加して
……っていう混乱の時代だったんですけども。

 それは同時に、LSDやメスカリンなどの“ドラッグ革命”の時代でもあったんですね。
なんでそんなにアメリカの社会が大きく動いたのかというと、
「気の利いたヤツはみんな薬物をやっていたから」という、
なんか、今から考えると「本当かよ!?」という状況があったわけです(笑)。

 1963年、ケネディが暗殺されて、副大統領に過ぎなかったジョンソンが自動的にアメリカの大統領に昇格しました。
ジョンソンの選挙区のテキサス州というのは、実は黒人差別が一番激しかった州で、
そこがアポロ宇宙計画の本部になっちゃったわけですね。

 この、アポロ計画が動いたり、ケネディが暗殺されたりしたのと同時期に、
ハーバード大学のティモシー・リアリーという、すごく有名な心理学者が、
大学の予算を正式に使って「刑務所の囚人にLSDを集中的に投与する」という実験を始めました。

 もうね、ティモシー・リアリーは研究発表したはいいんですけど、
やっぱり「LSDはいいものだ!」と言い過ぎて、後に、ハーバード大学を自分から辞めた後で、
さらにハーバード大学から「当校はティモシー・リアリーと関係ありません!」
と言われるまでになってしまったんですけども(笑)。

 この実験の結果がどうだったのかというと、極悪囚人だけでなく、
刑務所内のあらゆる囚人に大量投与した結果、彼らは急に神を語ったり愛を語ったりするようになって、
刑務所での暴動どころか、喧嘩すら一切なくなったんですよ。
 ティモシー・リアリーは「ほら見たことか! LSDは人類を平和にする意識革命だ!」というふうに言った、と。

 さらには、その前年に、オルダス・ハックスレーという、
『素晴らしき新世界』とか『動物農場』を書いたイギリスの有名な作家が、
『知覚の扉』という本を出してベストセラーになりました。