>>745
特に、LSDは、「人類の意識を平和的な形に改造し、
革命を起こす」という意味の“意識革命”という言葉が発明され、
これを主張しながら、LSDやメスカリンを無料またはメチャクチャ安く配り出す団体や個人が、
アメリカを中心に、世界中に山のように発生しました。

 この辺りの「薬物の存在が人類を平和に変え、それは全くこれまでと違うものになるだろう!」
ということを主張する善意によるボランティアが、一斉にいろんなことをやり出すというのは、
1980年代後半から2000年代くらいまでの、いわゆる“インターネット革命”とか、
シリコンバレーの感じと、ものすごく似てるんですよね。

 「LSDが意識革命をもたらすだなんて本当かな?」という疑いもあるでしょう。
それについては、こんな話があります。
 1953年に、ワトソンとクリックという科学者が、
「DNAは二重らせん構造をしている」ということを発見しました。
 この二重らせん構造というのは、DNAのX線解析写真でぼんやりとわかっていたんですけど、
それが二重らせんになっていることは、誰にもわからなかったんですよね。
ワトソンとクリックも「これがどんなものなのか?」と2人で議論していたんですけども、答えは出ず。

 ……で、ある日、2人は、その議論を一旦休憩して、どうやらLSDをやったらしいんですよ(笑)。
そしたら、2人ともピーンと来て。「これ、二重らせんじゃないの!?」
ということで、これでノーベル賞まで獲っちゃったんですね。
 この、「ワトソン、クリックの二重らせん構造の発見はLSDのおかげである」
っていうのは、けっこう有名な話になってるんですけども。

 こんな成果があったので、僕が生まれた翌年の1959年、
世界初の“LSD国際会議”というのがアメリカで開かれた時、
CIAと科学者の意見が真っ向から対立することになりました。
 CIAは「LSDは人間の精神を破壊し、狂気に追いやる!」って主張するんです。
当たり前です。彼らは実験としていろんな人間に投与して、データを山程持っていたし、
おまけに軍事目的で使うつもりだったから、世間の目からは出来るだけ隠したいんですよね。
 それに対して、科学者……主に心理学者は「LSDは創造性を高める!
ワトソンとクリックなんか、それでノーベル賞を獲ったじゃないか!」と主張して大論争が起こります。
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