>>649
 『機動戦士ガンダム』のジオン独立のモデルになった、ロバート・アンソン・ハインラインの
『月は無慈悲な夜の女王』という小説があります。
 その『月は無慈悲な夜の女王』では、地球に対して月が独立を挑むんですね。その時の理由は
「対等な取引をするため」だったんですよ。

 月は地球に対して、すごい格差があった。
 月が作ってる資源に対して、地球は一方的な搾取・安く買い叩くことしかしてくれない。
だって月っていうのは、元々人が住めない所だから、ご飯を作るにしても、廃棄物を処理するにしても、
すべては地球が頼りなんですね。

 なので、月の人間っていうのは、地球から下に見られてたし、どんなものを作っても、
地球に安く買い叩かれるという経済的な格差みたいなのがあった。で、あるにも関わらず、
じつは月に住んでいる人の大部分は、地球との独立戦争なんて、まったく望んでなかったんですね。

 まったく望んでなくて「地球連邦のヤツらは大キライだ」とか、
 地球から来たヤツらへの嫌がらせしか考えていなかった。
地球からの旅行者に対して「意地悪しよう」とか、そんなことしか考えていない。

 それに対して主人公が「そうじゃなくて、独立を挑んでみよう。
何故かと言うと、俺たちのほうが圧倒的な優位にあるから」って。
「何で優位なんだ?」「地球から食料も輸入しなきゃダメだし、
 水とか空気とかも全部輸入しなきゃダメだ。俺たちは圧倒的に不利だろ」
って言うんですけど、主人公チームは「僕たちは重力井戸の上に居る」と。

 重力井戸っていうのはSF業界でよく使われることで、重力の大きい惑星の上っていうのは、重力井戸の底なんですね。
 宇宙空間っていうのは、重力井戸の上に位置するから、上から下へ降りるのは簡単だけど、下から上へ上がるのは、
井戸の下から物を上げるのがごとく、すごく大変だと。

 この重力の井戸の上と下を利用すれば、勝てると。
 『月は無慈悲な夜の女王』では、リニアカタパルトが月の上にいっぱいあるんですね。
これが地球上に対して物資を送る装置になってる。
 年がら年中、でっかいドラム缶みたいな物の中に物資を入れて、地球に対して納品してるわけです。

 これを、ただ単に石ころにして、海の上に落とすんじゃなくて、ヤツらの大陸の都市の上に落としてやろうと。
巨大な岩が地球上に落ちれば、その重力エネルギーだけで核爆発並みの爆発力がある。
 おまけにこれは核じゃないから、きたない廃棄物も出てこない。放射性物質も出てこないので、安全な兵器だと。

 自分たちはじつは「重力井戸の上」という軍事上、というか地政学上の圧倒的優位にいることに気が付いた。
 だから地球に対して戦争を挑もうということになった。主人公たちが「どうにか月の人たちが一体になって、
地球人に戦争を仕掛けよう! 勝てるぞ!」というキャンペーンをする話が半分ぐらいあるんですね。