>>786
岡田:
 この「何が漫画を普及させたのか?」という理由について、フレデリック・ショックの「漢字とシャーペン説」っていうのがあるんですよ。
 まず「俺らが知っている“シャープペンシル”っていうのは日本人の発明だった」と。
「日本人は、子供の頃から、漢字の書き取りっていうのをシャーペンでする。おかげで彼らの指先はすごく速く細かく動く。
だから、あの民族が絵を描くのが上手いのは、当たり前だ!」って言ってて。

みなもと:
 それは違う、違う! 俺が子供の頃には、シャープペンシルなんて、高かった高かった! 鉛筆を“肥後守”で削るのがどんなに大変だったか!

岡田: 
 アハハ(笑)。
 フレデリック・ショットが言うにはですね、「日本人が持っているひらがな、カタカナ、漢字っていう曲線、直線、
あと細かい凸凹の真ん中をなぞらなければいけないという、こういうルールの数々が、
彼らが精密な絵を描くのを子供の頃から鍛えている」と言ってます。

みなもと:
 漢字については、俺は“ルビ”がそうだと思うけどね。ルビを使って、わざわざ「漢字だけではいけないから、
ここにちょっと説明を入れましょう」という、この発想はね、漫画にそのまま繋がっている。

岡田:
 なるほど。
 というのが1つ目の説です。
・・・
岡田:
 あとは、トーレン・スミスの説もあります。これはちょっと奇をてらった説かもしれないですけど、「著作権親告罪説」というもので。
 極端なことをいえば、アメリカでは、例えば、スヌーピーとかのキャラクターを勝手に描いたら、FBIがそのまま飛んでくるんですね。
それはなぜかというと、日本みたいに、著作権が「著作権者が訴えて初めて罪になる」のではなく、市民の誰かが通報した瞬間に、
逮捕されることはなくても、犯罪になってしまうような“いけないこと”だから。なので、何かを描く時にはオリジナルを描かなければいけない。
 「同人誌という文化がアメリカで根付きにくいのは、どうやってもこれが著作権法に引っかかってしまうからだ!」という説なんですが。