>>770
 『機動戦士ガンダム』から故意に削除された政治思想というのがテーマになってくるんですけど、
 「リバタリアン入門」っていうの語ってみようと思います。
 これが『宇宙の戦士』ですね。

『宇宙の戦士〔新訳版〕』(ロバート・A ハインライン)
 ロバート・アンスン・ハインラインという人が書いた、1959年ですね、昭和34年、『ALWAYS 三丁目の夕日』の1年後に書いたやつです。
 その頃にしたら先駆的な作品ですね。この表紙に書いてあるのがパワードスーツ。人間が着て、なかの動きが何十倍にも増幅されるスーツ。
 これジャンプしてるんですけど、軽くジャンプするだけで、背中のロケットブースターに点火されて、10メートルとか20メートルの高さに上がって、
 数百メートルくらい前進することができる。すべて人間の動きを何倍にも拡大することができる。
 聴力、耳の力にしても視力にしても、何倍にも拡大された。

 これは最近のSF映画では当たり前のように使われているんですけど、それを初めて小説の中で体系的に書いた、
 兵器として集団運用したら戦争はどんなふうになるのかということを書いたSF小説なんですね。
 この『宇宙の戦士』というのは当時のアメリカでも軍国主義とか暴力肯定と言われて、わりと大騒ぎになりました。
 『宇宙の戦士』『スターシップ・トゥルーパーズ』というのが原題なんですけど、宇宙の歩兵っていうんでしょうね、トゥルーパーズ。

(中略)

 60年代末から70年代はベトナム戦争で、反戦つまり戦争行為に対してはめちゃくちゃ反対運動が盛り上がったんですけど、
 核兵器をアメリカが持つことに関して、一番盛り上がったのが1958年『宇宙の戦士』の執筆当時ですね。
 アイゼンハワー大統領に色んな団体、学校から婦人団体から核兵器を放棄しましょうとか
 使うのやめましょうという署名が殺到してた時代でもあります。

 アメリカ自体が、戦争という行為に疲れてた時代なんでしょうね。朝鮮戦争もあり、第一次大戦でヨーロッパがもう戦争は嫌だ、
 と思ったのと同時に、第二次大戦でアメリカは勝ったんですけど、国が経済的にもすごい疲弊して若い人の労働力が奪われると。
 もう戦争はこりごりだと。やっと核兵器なりなんなりをもって、地球最後の戦争を終わらせたという実感があったんで、
 反戦気分もかなりあった時代です。

 その時代に『宇宙の戦士』という、これは子供向けの小説なんです。ジュブナイルっていわれる、青少年向けって言うんですけど、
 どちらかというと中学生高校生を対象にしたハインラインの一連の作品のひとつです。相手に軍隊へ行くことの正しさ、
 戦争をする正しさを語ってるんですね。ラノベの元祖みたいなものですね。