>>318
 「あなたの心です」って言われた後でクラリスは「はいっ!」って晴れ晴れとした顔で言ってるのに、ルパンは ものすごい落ち込んでる。
 それで次元に「いい子だったなぁ。 お前、残ってもいいんだぜ?」って言われちゃうんですよね(笑)。

 で、この「残ってもいいんだぜ」っていうセリフ終わりで、後ろから、背後から、バイクがこの車を追い抜いていきます。
 これがメチャクチャ上手い。

 落ち込んだルパンに、次元の「お前、残ってもいいんだぜ」に、ルパンが「そんなワケにいくか」とか
「バカ言うな」って言うんじゃなくて、峰不二子の影を見せちゃう。
 やはり、これがシャドウである証拠ですね。

 峰不二子の影を見つけて、それがルパンたちを追い抜いていって、追い抜いていったそのバイクの後部座席にはニセ札の原版がある。
 それを見た瞬間に、ルパンは生き返るんですね。

 生き返って、元気を取り戻して、それで不二子が「じゃぁねぇ〜」って言ったら、
「あらら、ちょっとお待ちなさいってばぁ〜」というふうに、いつものルパンになって元気になる。

 考え込んで落ち込んでいるルパンに新たな目標を、というよりハッキリ言って、
これまでと同じニセモノを追いかける日常っていうのを峰不二子が提示するわけですね。

 それでルパンは、本物を求める辛さより、ニセモノをこれからも追いかける日常に戻る事を選んで、不二子を追いかけるっていうですね。
 そんなメチャクチャ切ない話を宮崎駿は作ったんですよ。

 そんなのですね、女子供では気が付かないから、アイドルのお姉さんとかは適当に「ルパンみたいな人が理想です!」とか
「あんな恋がしたい!」とか言ってるけど、違うんですよ。

 中年男の視点から見たら、そんな辛い話なんですよね(笑)。
・・・
 さて、ここの「残ってもいいんだぜ」というのは、もちろん次元のセリフというよりは、ルパンの内面のセリフです。
 じゃあもし、次元に言われるまでもなくルパンが残ったらどうなったのかですね。

 クラリスを連れて行くわけにはいかない。
 それはクラリスを不二子にしちゃうからですね。

 もしルパンが残ったら、クラリスと結婚したかどうか分からないけども、まぁ結婚して、カリオストロ公国を再建する事になるんでしょう。
 その再建の方法はニセ札をやめて、切手印刷などの平和産業に切り替えて、ローマ遺跡を観光遺産として残すということなんですけども。

 実は これ全部、カリオストロ伯爵が生きてたら やっていた事と、まったく同じなんですね(笑)。
 ひょっとしたら、この「残ってもいいかもしれない」というのは、10年前のギラギラしたルパンだったら、
次元たちと出会う前のルパンだったら やっていたかもしれないんですよ。