ネロが鬱陶しそうにオレの手を払いのける。
「よせよ。お前は何も考えずに突っ走るところがある。無駄な戦いは避けたい」
 ネロは瞼を閉じて肩を竦める。

 オレは頭の後ろで手を組んだ。
「悪かったな、何も考えてなくて。今回は、お前に助けられたな」
 ネロの背中越しに、魔物らが黒こげになっているのを見て、オレは口笛を吹く。

「ねぇ。こんなとこにラウル古代遺跡があるわけ? 見たとこ森が広がってるし、でっかい湖はあるし。何もないじゃない」
 ネロのインカムに、ノイズ交じりでミサから無線が入る。

 お前は暢気でいいよな、ミサ。オレとネロは散々な目に遭ったってのに。オレは愚痴を零す。
 オレは空を仰いで額に両手をくっつけ、お気楽なミサを探す。
 オレはミサを探すのを諦めて頭の後ろで手を組み、樹の影に消えてゆく魔物らを見送る。
「あいつらも諦めてくれたし、さっさとこんなとこ離れようぜ」
 オレは肩を竦めて歩く。

 ネロの横を通り過ぎようとした時、ネロは手でオレを制す。
「待て、奴らの様子が変だ。油断するな、カイト」
 ネロは何匹か残った魔物を見回した後、自分が倒した魔物の前にいる、生き残った魔物たちを睨み据える。

「今度はなんだよ」
 オレは舌打ちして、斜め掛けの鞘に収めた剣の柄に手をかけ、残った魔物たちを見回す。
 こいつら、何しようってんだ?