「君の名は。」は、とにかく感動したんだけど、感動という言葉ではおさまりきらない、もっとそれ以上のもので。

2人の距離感が絶望的に遠いんだけど苦しいほど近くて。
こんなに惹かれあっているのに届かない距離が儚くて切ない。
それでも必死にお互いを探す2人の姿に胸が締め付けられる。どうしようもなく心打たれる。この一生懸命さ、このピュアさ。
現実では絶対に無い設定(入れ替わってるっていうのもそうだし、時空の歪み的な意味でも)だからこその特別な距離感が素晴らしかったなと思う。
古今和歌集・小野小町の歌を題材にしている点も見逃せない。
今も昔も、人を想う気持ちは変わらない。恋をする事はやっぱり素敵だと純粋に思った。

あととにかく色彩、映像、音楽の美しさ。
それに主演2人の声の質や表現力、素晴らしい。
特に色彩の美しさでは、最初の彗星が落ちるシーン、まだこの彗星がどんな意味を成すか分からなかったが、その美しさだけで切なくなって何だか泣きそうになってしまった。
2人の住む対照的な街、糸守と東京だが、どちらも魅力たっぷりに描かれている。
東京って楽しそうだなとワクワクしたし胸が踊った。
糸守は神秘的で、自然の美しさ、田舎特有の雰囲気がすごくよく出ている。あの事故で無くなってしまうというのもあり、とても儚い街のように思える。
どちらも1度訪れてみたくなる、すごく魅力的な街。

映画が公開される前から、2人が入れ替わるという設定、恋愛もの?というのは分かっていたが、そこにトリック的な要素や人間の感覚的な要素が入っているのが良かった。
何か大切なものを忘れてしまったという感覚や、ずっと何かを探しているという感覚はすごくよく分かる、共感できる。
トリック的なことは、2人の間の時間のずれが分かったところはゾクッとした。物語が急展開するのが、何かが壊れていく感じがして凄く怖くもあった。
そしてこのスケール感。入れ替わるという設定自体はベタで平凡だが、そこにあの事故や時間のねじれを組み込んでいるというのが天才としか言いようがない。
どれだけ考えればこんな物語を生み出せるのか。奇跡としか言いようがない。

大げさな表現と思うかもしれないが、この映画を見れただけで生きてて良かったとさえ思えた。
見る人をそんな気持ちにさせてくれる、希望に満ち溢れた映画だった。