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定式的な法則性に基づいて生起する再現可能な現象とは、局在的な安定した因果系のみに限定され、ここに物理科学の一意性と限界が現れます。
統計的な対応にしても、過去の履歴から影響を受ける経路依存性(非可逆性)をもち、その時でしか生成し得ないような強い一回性(再現不可能性)に依存する生物的、有機体的なシステムをあつかうことはできません。
仏教では、主体と客体を含めた世界の諸現象を識別する心の作用を分別智と呼びます。
分別智が自我や事物がそれ単独で独立し、静的な実体として存在しているという虚妄、ひいては煩悩を生みだす要因であるとされています。
そして、無分別智から得られる究極的に全体が統合された無自性の知見こそが悟りの状態だと説かれます。
近代科学とは、それを包括する外部から切り離されてもともと存在している対象についての知識を得ていきます。
しかし、実はその過程において起こっているさまざまな複雑な主体と客体の交錯、個物と万象の交錯、
そしてなによりも量子系世界の背後にある全体性の超自然存在を隠蔽しており、実態とは大きくかけ離れています。
仏教に限らずあらゆる呪術・神話・宗教では、自性が支配する唯物機械的世界は二次的なものであり、本質ではないといいます。科学的方法よりも現実、真実に即した認識や理解の方法かあるといいます。
宗教の手法は科学のそれとは反対であり、認識・思考形式も現代人のそれとは異なるアプローチをとります。