>>383
じっさいの世界の万象は因果関係が複雑に交錯し、観測者を含めた膨大な諸因子が関わっています。複数の要因が絡むと多様で動的な因果関係を生じます。
このような複雑多様な現実そのものは人間の理性による認知と把握の限界をはるかに超えています。そのままでは数学的、定式的に記述することもできません。
このために近代科学は客観性、普遍性、再現性によって説得力を確保したうえで、複雑な現実を分解して単純化することで理解します。
世界の万象を時間的・空間的に限定して観察し、個々の単純単調な現象や部分要素の物質を抽象することで、少数、あるいは一つの原因と結果の関係へと還元します。
この単純化した因果関係がもつ規則的再現性を解析することで一般法則が発見されるのです。
たとえば、現行の物理学では、物質と力を対称性に基づいて統一する試み、点粒子ではなく紐状の
物質を導入する試みなどが存在しますが、「素粒子の場がおこなう局所的な相互作用」という基本的な枠組みを踏襲しています。
この枠組みの下では、「あらゆる現象は特定の時空点での粒子どうしの局所的な相互作用に還元される」という部分要素への還元と法則性による単純化な解釈が主流です。
言い換えれば、「全体は単純な部分要素の機械的な集合にすぎない」と見なされているのです。