>>382
ニュートン力学にとっての世界とは数学的アルゴリズムに基づいて定式化された物質の運動の現れであり、
単純なルールを組み合わせた演繹的な記述によって神羅万象を説明することできると考えられています。
他方、ニュートン力学から発展した量子力学では、世界において観測者を含めたある種の全体性が重要な意味をもつようになりました。
量子という存在は粒子と波動の相補性をもち、そのふるまいが観測者を含めた時空全体の状況に依存するため、自性が支配する唯物機械的な世界観を否定し得えます。
しかし、量子力学という学問もまた、ある初期条件の下の波動方程式の解として世界を定式的に記述するという点で、世界の理解の仕方がニュートン力学的なものから大きくはみだしていません。
また、その観察方法において、量子的対象系に対して古典的な時間の流れを感じる外部観測者(量子系から分離した巨視的な観測装置)の存在が不可欠とする点で、
観測者と観測対象が対立する主客二元論の範疇にあります。世界(量子系)から主体・主観を切り離す外在化・対象化・客体化・客観化の方法をとらざるを得ません。
対象との相互作用において観測者の主体性までを含まない点において、世界を自性的、機械的にとらえることに変わりません。
このように完全に客体化され死した世界では、生きもののような主体性や自発性は認められないし、定式化できない動的な原理法則を用いずに説明されます。
ここに物理科学の一意性と限界がありす。