10年前に亡くなった爺さんから聞いた話。
俺の街では空襲で1,000人以上が死んだ。
特に、当時の祖父の家のあったあたりは酷くて、一家まるごと焼け死んだ家も少なくはなかったらしい。
隣近所でも、遺体がどれだか判らなくて、とりあえず亡くなったという事になっている人や、生死不明のまま、実家に引っ越して行ったと思われる人など、様々だったらしい。
昭和30年代になって、爺さんが隣県の縁者の結婚式に出席したときに、空襲前まで隣に住んでいた人と偶然再会し、懐かしい昔話に花を咲かせたのだが、その時に妙な話を聞かされた。
その隣人の向かいの家は一家まるごと焼け死んだはずだったのに、戸籍上ではみんな存在しているらしい。
その隣人は金融機関に勤務のため、何かの縁でそんな話を耳にしたらしく、気になって調べたようだ。
なんとか、現在の住まいを突き止めて、何気なく接触したところ、言葉の感じからその向かいの人とやらは朝鮮人のなりすましのようだと言っていた。
爺さんは、戦後はこんな話が多くあったんだよって、憮然とした感じで話してくれたよ。