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フラットアース Part8
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0916本当にあった怖い名無し
垢版 |
2023/01/06(金) 09:40:19.41ID:mi+AyH930
種村季弘 『魔法の眼鏡』

本書「あとがき」より:

「それを掛けるとあらゆるものが薔薇色に見える眼鏡もあれば、またあらゆるものが暗黒に見えてしまう眼鏡もある。しかしいずれにせよ、あらゆるものが薔薇色なら薔薇色、黒なら黒、と同じ色に見えてしまうのでは、何の色もないのと同じことで、おもしろくも何ともない。
 魔法の眼鏡はそれとはちがう。これを掛けると妖婆が美女に見えたり、美女が妖婆に見えたりもする。思いがけないものが見えてくるのだ。肉眼では見えないもの、つい見落としていたものが見える。それでいて見る対象は、現在肉眼に見えているものでしかない。それが、これを掛けて見ると、みるみる見慣れた外見をかなぐりすてて思いもかけない姿に変貌してしまうのだ。
 そんな話に目がなくて、機会のあるごとに物語風にまとめてきた。それを一冊の本に編んだのが本書である。私なりのメルヘン集と思って下されば幸いである。
 なかに、いかなる眼鏡も掛けないで世界を見た男の話が、一つだけまぎれ込んでいる。フリードリヒ二世の『鷹の書』の話。魔法の眼鏡をずっと掛け続けていると、それはそれで世界が一色にしか見えなくなる。最後にはそれを外して見る。するとどうなるか。それが巻末の一章の意味であると思って頂きたい。」
0917本当にあった怖い名無し
垢版 |
2023/01/06(金) 09:41:06.20ID:mi+AyH930
◆本書より◆

「悪龍、美女に変身す」より

「さなきだに中世ではドラゴンは悪魔と同一視されていて、有鱗の胴、嘴のある醜貌や手足の鉤爪ないし水掻き、トカゲ状の尾などから構成された悪魔のイメージはドラゴンの畸形とそっくりである。つまり悪魔もドラゴンも、その身体部位のそれぞれを人界からもっとも遠い水中や大空や森や山岳地帯に生棲する生物から採集した上で合成されており、人界が秩序に守護されているとするならば、これにたいする渾沌として造型されたのだった。
 この一事からしてもドラゴンが渾沌といかに深い関係にあるかが知れようというものだが、さて、始末に悪いことに、渾沌は秩序形成以前に存在したばかりでなく、秩序の外側にいまも身をひそめているばかりか、秩序の崩壊とともに隠されていたその全容を明らかにするやもしれない。ドラゴンが黙示録的な終末思想と結びつきやすいのはそのためである。
0918本当にあった怖い名無し
垢版 |
2023/01/06(金) 09:41:44.02ID:mi+AyH930
ゲルマン神話では悪魔的な神ローキーの後裔であるミドガルドの蛇が万有の周囲にとぐろを巻いている。そこでアーゼがこれを海のなかに投げ込むと、ミドガルド蛇は水のなかでみるみる巨大に成長し、ついには大地を全身で取り巻いてしまう。ミドガルド蛇のこの大地緊縛は雷神の鉄槌が下る日まで解けないが、縛が解かれるその日は世界の終りの日であって、このとき地上はふたたび渾沌の支配下に入るであろう。
 ひょっとすると現代の映画やSF小説にしきりに現われる、放射能汚染のために突然変異したドラゴン状の怪物たちは、渾沌への古き終末論的恐怖と期待の隔世遺伝現象なのではなかろうか。(中略)それは人間をはじめとする哺乳類がみずから招いた環境不適応のために地上から絶滅し、かつて古代跛虫類の原因不明の死滅の後に哺乳類が出現したように、現在の哺乳類の死の後にふたたび未来の巨大爬虫類が地上に君臨する戴冠式のためのお触れのごときものではないだろうか。
0919本当にあった怖い名無し
垢版 |
2023/01/06(金) 09:42:21.05ID:mi+AyH930
そういえばバジリスクが王冠を戴いている図がどうも気になるのである。私たちの神話も、イザナギ、イザナミの最初の子ヒルコが爬虫類に似ているために渾沌たる海に差し戻されたが、しかし進化の長大な過程のなかで爬虫類と哺乳類の分岐する点までさかのぼるなら、地質学的変化がそのときどきで適応可能な両者のうちの一方を選択してきたのだから、類的本能の深層における人間とドラゴンの戦いはまだ決定的には終っていないというべきなのである。人間が人間となるためにはドラゴンを殺さなければならなかったが、このイニシエーションは先方にとっても同様である。ドラゴンが空想の世界から現実に帰還してくれば、人間は地上を去って空想の領域に移り住まなければならない。
0920本当にあった怖い名無し
垢版 |
2023/01/06(金) 09:42:40.43ID:mi+AyH930
しかし、だからといってドラゴンは人間の永遠の敵ということにはならない。錬金術の寓意画にはしばしばドラゴンが象徴獣として登場するが、そのもっとも重要なものはみずからの尾を咬んでいるウロボロス(宇宙蛇)である。発端にあった蛇(渾沌)と終末にくる蛇(渾沌)とは一つの円環となって結びつく。これが賢者の石もしくは完全性の象徴である。円環が結ばれるとき賢者の石探究の道士は象徴的に地上を去って、高次の不滅の精神の王国に移り住む。とはつまり、二度目にドラゴンがやってくるときに私たちが移り住むべき世界は、ありようはこうした魅せられた仙境なのだ。」
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