地元の山の話。
俺の地元には廃トンネルがある。地元では有名な心霊スポットで、当時まだクソガキだった俺は友達2人と自転車で探索に出かけたんだ。知ってはいたが麓からは結構距離がある。途中適当に休みながらチャリを引き、例のトンネルへ向かった。
 トンネルって車以外で渡ったこと無かったんだけどさ、風がスゴい気持ちいいの。疲れ果てた俺ら三人はトンネルの歩道に腰掛けて一服してた。ふーっと俺らが煙を吐く音、風がトンネルに反響する音。木々が揺れる音。疲れてる俺らはボーッと山が発する音に聞き呆け口数も減っていた。どれくらい時間がたったのだろう。すると遠くから、カッ、カッ。不意に不自然な音が聞こえてきた。俺ら以外にも人がいてもおかしくは無いが聞こえてくる跫音はヒールを思わせるそんな音だった。急に肌寒く感じた俺らは山から下りることにした。帰り際、なんとなく振り返るとそこにはボロボロのワンピースを着て俯いた大女がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。俺は友達にはそのことを伏せ、早く帰ろうと急かし、家路に着いた。
 別にその後なんもなかったけど人生初の心霊体験。最近、山の神は嫉妬深い女神なんだと聞いて腑に落ちた。当時の俺、ロン毛だったからもしかすると俺のこと取りに来てたのかも。