母親の周りに女の子は居なかった。
外を見ていた男の子しか母親の手を握っていない。
女の子の姿は何処にもなかった。

「女の子って何ですか?」

母親は「どういう事だろう」といった顔をしていたらしい。
おばさんは「え?」という素っ頓狂な返し。
周りの人も「?」といった具合だった。
サラリーマンの男性が弟に対して「居ましたよね?女の子」と聞いてきた。
弟も「いました」と答える。
その場の全員が恐らく女の子を見ていたはずだった。
しかし当の本人である母親は「本当に何のことだか」と言った感じだったそうだ。
弟は女の子の表情や服装を思い出そうとしてもどうしても思い出せないらしい。
唯一覚えているのは「黒い髪をしていた」ということだけ。
真実を知ろうにも既に電車は出た後。
女の子の正体は本当に幽霊だったのか、母親を勘違いした生きた子どもだったのか、はたまた見間違いだったのか。

本来なら「他の人が見えないのに自分だけが見える」という事実が多い中、「他の人は見えていて当の本人が見えない」は珍しいと思った。
そしてそういう現場に立ち会えた弟が少し羨ましくなった。

この話は聞いただけなので、本当にあったのか創作なのかは判断つきません。
なので、信じるか信じないかはあなた次第。でお願いいたします。