私がこれを書くことになったのは、とある体験をしたからだ。
それは駅で電車を待っている時だ。いつもなら時間道理につくはずだが、とある事情で電車に遅れてしまったからである。
音楽プレーヤーに入っている曲を聴きながら周りの景色を眺めていると、人がいない。普段ならいるはずの時間帯に人がいないのは、少々奇妙だと思いながらも次の電車を待っていると、影が見えた。
それは人のものではなかった。犬や猫、鴉などのものでもない。なら何なのか、それは「怪物」である。
怪物などこの世にいないと思うものもいるだろうが、私は見たのだ。大きな体に腕は細いが足が太く、それに角も生えていた。このような異形な姿は、怪物以外になんというのか、私は知らない。
やがてその影は消え、待っていた電車が駅に着いた。私はその電車に一目散に逃げこんだ。
そんな中ふと周りを見てみると、乗っている乗客は私以外非常に静かだった。それもそうだ、私が、「今さっき怪物を見た」と言っても、誰も信じるどころか、笑いものにする者ばかりだろう。
それにしたって静かだ。せきの音一つしない。ただ、その時の私は、今さっき見た影のことで、この違和感に気づけなかったのだ。
扉が閉まり、車両が発進しだした。気が付くと、降りるべき駅をすっかり超えてしまっていた。私は安堵感と影への疑問ですっかり眠ってしまっていたようだ。しまったと思い、次に向かっている駅を確認してみると、聞いたことがない駅だった。降りた後の駅など覚えていないのだ。
仕方がなく次の駅で降りることを考えながら窓越しの景色を見ていると、一羽の鳥が見えた。私はまだ夢の中にいるのかと思った。その鳥には、人の顔がついていたのである。人面犬なら聞いたことはあったが、まさかこんなものがいるなど。そう思った時、さっき見た影のことを思い出し恐怖した、、、という夢を今朝見た。
夢だと安堵し、用事に遅れないため、早めに外を出た。道中、音楽プレーヤーに入っている曲を聴きながら町の景色を眺める。しばらくして横断歩道についた。
信号が赤に切り替わり人々が渡り始めた。人々とすれ違っていく中、ある男とのすれ違いざまに私は今朝見た夢のことを思い出した。なぜなら、その男の顔は、夢のにでてきた鳥にそっくりだったためである。
私はまだ夢の中にいるのだろうか。